不憫かわいい密着系後輩りとちゃんは、大好きな先輩の心が読める 〜心を読んで完璧なアプローチをしてるのに先輩が全く本気にしてくれません!〜
【第6話】先輩の隣に座っちゃお〜 個室居酒屋で密着バトル!・前編(side:りと)
【第6話】先輩の隣に座っちゃお〜 個室居酒屋で密着バトル!・前編(side:りと)
お仕事終わりの午後7時。
なんとなんとなんと!
今日は先輩と2人でお夕飯なんですっ!
大抵の場合。(フランス語だとル・プリュス・ヴァン)
みんなが帰っても、とっても偉い先輩は1人で残ってお仕事をしています。
なのでお夕飯なんて行けません。
でも今日は、珍しく先輩が定時に終わったので、思い切ってお誘いしてみました。
そしたらなんと一発OK!
だからワクワクが限界突破しています!
興奮すっぞ! 宇宙へGo!
◇
「せ〜んぱいっ! どこ行きます?」
「ん、そうだね……」
(どうしよう……りとちゃんの好きな食べ物も、好きなお店も分かんないぞ……)
ふっふん。こういうのは素直に聞いていいんですよ〜。
「先輩は食べたいものとかありますかぁ?」
「な、なんでも……棚橋さんは?」
「そうですねぇ〜。あたしもなんでもいいですよ〜。先輩と一緒なら!」
(うっ、どうしよう。なんも分かんない……)
ああっもうっ! かわいいなぁちくしょう!
「じゃあ……前に歓迎会で行った居酒屋さんにしませんか?」
「う、うん。いいよ」
消極的で受け身。これが先輩です。
その辺の女の子なら、ちょっと頼りないと感じるかもしれません。
でも、あたしは一向に構いませんよ!
先輩は今までに1度もデートした事がない(と思われる)ので、もちろんあたしがリードします!
ここでお店選びのポイントです。
初めてのお店だと、緊張しちゃって上手く楽しめません。
でもお互いに知ってるお店だと、安心感があって会話に集中できるんです。
これ超重要デート戦術ですから覚えておいて損はないですよ。
それにあの居酒屋さんは個室もあるので、より距離が近くなりますね〜。
「はいっ! もう着きましたね!」
「あ、うん」
いつもなら先輩との時間を楽しむためにゆっくり歩きますが、今日のお楽しみはこれからです。
石になって重くて落ちちゃう前に、急いで来てしまいました。
「すみませ〜ん! 2人で予約した棚橋です!」
「え? 予約してたの?」
「満席だったらイヤじゃないですか〜」
「いつの間に……」
「あのあと、すぐにアプリで予約しましたよ〜」
「あ、ありがと」
う〜ん。お仕事ではとっても気遣いできる優しい先輩ですが、こう言う時にはまるで気が利きません。
世間だと男性にこそ求められるスキルらしいですよ。
でもあたしはへっちゃらぽん! 先輩が慣れてないからサポートができる!
むしろそのギャップもいい! あぁ先輩! 愛してま〜す!
なんて事を考えていると……
「ん? りとちゃん?」
カウンターに座っていた女性が、あたしに声をかけました。
「え? あぁっ! ゆ、柚香(ゆか)さんっ!?」
ガチャメラェェェェエ!
なんでココに柚香さんがっ!?
「お、お疲れ様ですね」
「お疲れ! お、石冷君もいんじゃん。せっかくだし一緒に飲もうよ!」
「あ、はい。いいよね、棚橋さん」
(……)
先輩の心の声は聞こえません。
柚香さんの登場で、そっちに持っていかれちゃいましたか。
「むぅ……も、もちろんですね」
「ははっ! なんだよその喋り方!」
2人きりの楽しいディナーのはずが、まさに悪夢!
長い髪を振り乱して、死神の鎌を振るう柚香さん! マジ許すマジ!
そのまま3人であたしの予約した個室へ向かいます。4人掛けのボックスシートです。
もうこうなったら切り替えましょう。柚香さんよりも有意に立つしかありません。
「柚香さん! どうぞこちらへ!」
まずは柚香さんの席を指定します。
上司は上座(かみざ)へ。そして後輩2人は向かいに座る。つまり、あたしと先輩は密着できるわけです。
普段は息苦しいビジネスマナーですが、人生で初めて感謝しましたよ。
「ん、ありがと。石冷君、そっちに荷物置いていい?」
「あ、はい」
先輩は柚香さんのカバンを受け取って席につきます。
「じゃあ、あたしは先輩の隣に座っちゃお〜」
っと……あれ?
先輩が手前に座ってます。奥側に詰めてもらわないと、あたしが座れないじゃないですか。
えへへ、本当に気が利きませんねぇ〜。かわいいですねぇ〜。
すると柚香さんが一言。
「あ、そっか! そっちに荷物置いたら、りとちゃん座れないか!」
あ、まさか……
「りとちゃん、こっち座りなよ!」
この女ぁ! 死神かぁ!
天然じゃなくて策略だった! 先に荷物を置いて先輩の横に座れなくした!
ただ邪魔するだけじゃなく、風車のようにあたしの首を刈ろうと言うわけですね!
「むぅ……では失礼しますね」
仕方ありません。
こうなったらトコトンやってやりますよ。
可能性のドアはロックされたままですが……やれやれ、今度も壁をブチ破るとしますか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます