しゅらららば03/後輩と新入部員
都内とはいえ端っこ、そして歴史あるといえば聞こえはいいが単に古いのが市立倉美高校だ。
とはいえ、カケル達が入学する前に新校舎が完成し学校生活は快適である。
そして残った旧校舎は取り残さず、贅沢にも部室棟となった訳であるが。
(…………そーいやまだ思い出せないんだよな、俺ってなんで卓上ゲーム部に入ったのか)
旧校舎三階の端にある卓ゲー部の前で、カケルは朝っぱらから立ち止まっていた。
朝のホームルームにはまだ少し早いが、教室で待機しても不自然ではない時間帯。
しかし昨日あんな物騒な宣言をされてしまったのだ、安息の地である部室に逃げ込みたいというものである。
(まぁ、殆どが幽霊部員だけど居心地良いし、思い出せなくても困ってないし今はいいか)
不可解なことはもう一つ、いつの間にか知らない鍵を持っていたことだ。
見覚えのないキーホルダーがついて、カケルの家のでも部室のでもない謎の鍵。
不気味で不可解であったが、捨てる気もしまっておく気にもなれなくて肌身離さず持っていて。
(これもいつか思い出すのかね、まぁ状況的に見れば事故る直前に拾って、車に気づかなくて避けきれなくて……みたいなアホなことしたんだろうけど)
となれば、警察に届け出れば良いと思うのだが。
(ゲームで売れないアイテムってあるけど、こんな感じなんだろうなぁ)
制服の胸ポケットの中のそれを、服の上から確かめてカケルは部室の中に入ると。
「あ、やっと来た来たぁ。おっそいですよセンパイ! ワタシ待ってたんですから、それとおっはーっ!」
「相変わらず朝っぱらからテンション高いなぁ菫子。つーか待ってたってマ? そんなに俺に会いたかったってコト??」
「なにバカなこと言ってんすか、昨日のコトっすよ、昨日のぉ、センパイのクラスの告白騒動! ネタはしっかり上がってんです、付き合ったんです? 恋人になっちゃったんですかカケっさんセンパイ!?」
「え、もしや菫子も俺と恋人になりたい!?」
「ちょっと自意識過剰じゃないっすか?? 頭打った後遺症がまーだ残ってるみたいですね病院行くなら付き合いますよ? いつでも言ってください堂々とサボる理由にするんで!!」
「うーん、もう少しデレてくれていいんだぞ??」
部室で待ち受けて居たのは、一個下の後輩である
髪はウルフカットで耳にはピアス、制服を着崩し胸元が大変エロティック。
外見も性格も非常にギャル味がある彼女ではあったが、何故かカケルと共に卓上ゲーム部に所属しており。
「――なぁ、なんで俺ってこの部に居るんだ? 菫子も前はアナログゲーム好きってキャラじゃなかった気がするんだが……」
「はいはい、そうやって話を反らしても話題は変わりませーん、昨日何があったか、あのゴリラ女と付き合ったのかちゃんと話してくださいよぉセンパイ!!」
卓ゲ部の内装は壁側にゲームを飾ってある棚が、中央には机を並べて配置し大人数で遊べるようになっている。
カケルは鞄を机の上に置くと、苦笑しながら菫子の対面に座り。
「なんでそんなに気にするのか分からないけどさ、――ありがと菫子、心配してくれたんだな」
「…………相も変わらずまぁ、よくもそんな照れくさい言葉をストレートに言えますね。しかもやっさしー笑顔でさぁ……。そういう顔を向けるのは然るべきヒトが居るでしょうが、あ、ゴリラ女にそんな顔見せてはないですよね? 見せてたら怒りますよ???」
「その台詞で俺のことガチ恋じゃないってマ???」
「ごめんセンパイ、ちょっとその顔じゃあパパ味が強くて……言いにくいんですけど、整形して貰えれば多分、きっと、おそらく――好きになるかも?」
「本当にすまなさそうに言われるとキッツイんだけど!? そんなに俺の顔不満!? 安心感あるってよく言われるのに!?」
がびーんとショックを受けるカケルに、今度は菫子が苦笑しながら。
「安心感はあってもイケメンじゃないし、不細工って訳でもないですけど…………家族は恋愛対象にならない的な??」
「そんな妹よ!! 妹ならお世辞でもイケメンと言ってくれ!」
「やーだぁ、お兄ちゃん息くちゃい~~!」
「ゴッフアァッッッ!!! し、死ぬ、なんてコトだ教室ではリラに命を狙われ部室では菫子にメンブレされ…………くっ、だがこれは身近に美少女が二人いるという証ッッッ!!!」
「その意味わかんないポジティブ思考好きっすよセーーンパイっ! 元気だしてーっ!」
肩を揺らしケラケラと笑う菫子の姿に、いつもの部活の光景だとカケルは安堵を覚えた。
だが次の瞬間であった、扉がバンと乱暴に開けられ。
「たのもーー!! ボクの名は
「うわああああああああああん、ゴリラに殺される助けて菫子オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
突如乱入してきたリラの姿を見て、カケルは慌てて立ち上がり猛ダッシュで菫子の後ろに隠れたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます