第3話 悪役令嬢様の悪い噂

「陛下に言われたんです。フェリー様は、財力と権力があることをいいことに、

傲慢な態度をとっていて、いつも侍女や周りの人間に迷惑をかけている我儘王女。

おまけに、気に食わないことがあったらすぐに怒鳴り散らかすような奴だから、

何かあったら、すぐに俺に言えよって。」


「は?」


「でも、そんなの嘘ですよね。フェリー様は、我儘どころか、

平民の私にすら勉強を教えてくれるお優しい方。

それに、陛下に怒鳴られるのは、貴族の方にとっては、

屈辱でしかないんですよね?そんな出来事の原因を作った私に、怒鳴るどころか、

あっさり許す......いえ、フェリー様は、最初から怒っていなかった。

平民の私になら、正直、暴力をふるうと思っていました。

でも、フェリー様はそんなことしなかった。フェリー様は、

とてつもなく心がお広い方です。」


.........違う。違うのよ。フェミーちゃん。


私は心なんて広くない。それに、優しくできたのは、あなた好きな人 だから。

私だって、あなた好きな人以外だったら、どうなっていたかわからない。

でを、もしフェミーちゃんに、人によって態度を変えているとばれたら?


........いやでしょうね。そんな人。


そっと、目の前の少女の瞳を見る。

自分の考えに自信を持っている目。きっと私があなただけにしかこの優しさを

ふりまかないと知ったら、この瞳は汚れる。人を疑い、

自分の考えに自信が持てなくなる。


そんなのだめだ。フェミーちゃんじゃない。


きっと、この感情は、彼女への優しさなんかではなく、

単なる自分のエゴでしかない。


私は悪役令嬢だ。.........でも、私はフェミーちゃんのためなら、

聖女だって何だって演じてやる。


「私、陛下が嫌いです。だって、こんないい人を悪いように言うなんて、

それこそ、貴族の恥です!」


「そんなこと言っちゃだめよ。私にだって非があるのかもしれないですし........

それに、あなただってお優しい方ですよ?」


だって、フェミーちゃんは、他人のことを自分のことのように怒れるもの。


「そっ、そんなことは.......それに、やっぱりフェリー様はお優しいです!

陛下に悪く言われても、自分に非があるか考える。

簡単にできそうで、なかなかできないことです!」


















やさしい.......か。


私はどれだけ今日、彼女好きな人に嘘をついたのだろう。


私だって陛下......セフィア様が嫌いだ。

でも、今日はセフィア様のおかげで、フェミーちゃんと中を深められた気がする。

それに、あの後.......


(フェリー様!良ければ私のことを、フェミーと呼んでくれませんか?)

(えっ、いいのですか?)

(はい!むしろそう呼んでいただけると嬉しいです!)

(わかったわ。フェミーさん。私のことも、ユリットと呼んでください。)

(はい!これから3年間、よろしくお願いします!ユリット様!)

(はい。よろしくね。)


ふ~。このままフェミーちゃんと、お友達になれないかしら?

たとえこの気持ちが伝わらなくても、近くで見守ることぐらいなら許されるでしょうか?


彼女はヒロイン。私は悪役令嬢。でも、大丈夫。私は皇子を愛していない。

わたしが今世この世界で好きなのは、彼女だから。


だから、魔法が暴走することも、魔女になり、

ラスボスになることも防げる.......はず。


だからね、フェミーちゃん。せめて、少しでも長く、


あなたと一緒にいることを、許してね。

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