第4話 悪役令嬢様と王子様

翌朝。教室にて。


「ユリット様!おはようございます!」

「ふふっ、おはようございます。フェミーさん。

朝から元気が良いですね。」

「元気すぎるのも、いかがなものだと思うが?」


「「っ!?」」


私たちは、二人そろって驚く。

声の主は.......セフィア様だ。


「なんだ?二人してこの俺に挨拶をしないというのか?」

「とっ、とんでもございませんっ......へっ、陛下、おはようございます....」

声は震えているが、大きな瞳は、セフィア様のことを、睨みつけている。

あ~あ。セフィア様、完全にフェミーちゃんに嫌われてるな~


「ご機嫌麗しゅう。セフィア様。突然、二人で話していたところに、

急に割り込んでこられたので、少し混乱して、挨拶が遅れましたわ。」


二人で、という単語を強調させることにより、暗に、私たちに

貴方様の入る隙などない、とセフィア様に言う。

それに、せっかくフェミーちゃんと話をしようとしたのに、

セフィア様に割り込まれて、正直、とっても不愉快だ。


「ふんっ、お前の言い訳などどうでもよいわ」


だが、そんな私の意図はセフィア様には伝わらなかったらしく、

セフィア様は、フェミーちゃんの方へ、顔を向ける。


「俺が用があるのは、フェミー嬢だ。おまえに用などない。」


はぁ!?せっかくフェミーちゃんと女の子同士仲良くおしゃべりしようと思ったのに!

てか、私だって、あんたなんかに用なんてないんですけど!?

と、私が一人、心の中で怒っていると・・・


「あのっ、その用って、私じゃないとダメなんですか?」

「......?お前じゃないとだめだ。お前は何を言っている?」


いや、何を言ってるって、そりゃ、こっちのセリフだよ!


「えっと、じゃあ.......ユリット様と一緒に行くのは、だめですか?」

「は?ふざけるのもいい加減にしろ。俺は先ほどからお前に用があるといっている。」


あぁ、だめだ。これ以上は、セフィア様が本気で怒る、そう思った私は、

フェミーちゃんにだけ聞こえるような声で、


「これ以上はセフィア様が怒ります。ここは大人しく、

セフィア様の指示に従った方がいいわ。それに、セフィア様だって、

入学して早々に騒ぎを起こすことはしないでしょうし。」


その言葉を聞いて、フェミーちゃんはそっと私の顔を見る。

そんな彼女に、私はそっと、でもはっきりとうなずく。


「わ、わかりました。」


その返事は、セフィア様に言っているようで、本当は、

私に返事をしてくれていることを、知っている。


「予定より、だいぶ時間を食ってしまったな。速くいくぞ。」

「は、はい」


















一人教室に取り残された私は、考える。


.......こんな展開、ゲームであったか?


いや、もちろん、ゲームで3年間、毎日イベントが作られているわけではないが、

入学して2日目で、フェミーちゃんは、あんなにセフィア様のことを嫌う.....

何てこと、あり得るのか?


まさか、ゲームの展開が変わっている?どうしてだ?


.......いや、心当たりはあるな。


ゲームでは、ユリットはフェミーちゃんのことを平民と呼んでいるし、

本来、どんなゲームでも、ヒロインと悪役令嬢がこんなに

序盤で仲良くなるなんて、あり得ないだろう。


だからこそ、物語が変わてしまっている......?


まずいな。非常にまずい。


ゲームの展開が変わってしまえば、起こるイベントも変わるだろう。

ゲームでフェミーちゃんは、何度も命の危機に会う。

でも、私の知識があれば、そんな危機も解決できるだろうと思っていた。

ゲームの展開が変われば、それもできなくなるか.......?


あ、でも、ゲームであった命の危機であれば、私は対処法を知っているから、

意外と何とかなるかも......?


私がいろいろ考えていると.......


「あ、あの。フェリー様。昨日の授業のことで、わからないところがあって.......

教えてくださるとうれしいのですが......。」


一気に、私は現実に引き戻される。


少し考えた後、昨日は平民であるフェミーちゃんに勉強を教えようとしたし、

今はフェミーちゃんがいないとはいえ、フェミーちゃんに「優しい」と言われたので、むげにはできず........。


「わかりました。どこが分からないのですか?」

「あ、ありがとうございます!えっとですね.........。」


そして私は、授業が始まるまで、彼女に勉強を教えてあげた。






........まさかこの出来事で、フェミーちゃんが

大変な目に合うなんて、つゆ知らず。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る