第5話 天使店主

 そこに居たのは、この店の店主かはまだわからないけど、金髪碧眼の不思議な衣装の女の子で、なんか真っ白な小さな翼が生えてます。


 パッと見は天使そのもの。


 そしてモーセの盾型石板らしき板を抱えていて、眠そうな目でこちらを見ながらポチポチブラインドタッチしてます。

 なんか社畜感のある、お疲れ具合に見える。

 天使も疲れるんですかね。


『あー…多分、キミはバグさんです』

「…」


 どうやら僕はバグらしい。

 虫ケラじゃなきゃいいけど。


 だって目の前にいるだけで足がガクガクしてくるもの。殺意じゃなくて、これは純粋なエネルギーの塊。あるいは思念の集合体かも。知らないけど。神性、霊威、畏れ、僕穢れ。そんな感じ。


 例えばそこにいるだけで災害レベルの苦しみがくる。


 熱い。冷たい。死にたい。殺されそう。

 これは無視できないし、直視できない。


 とりあえず土下座を敢行。

 咎人は伏して黙るべし。

 

『おや? この姿だと媚びたりイキリ散らかしてくるものですが。ふむ。なかなか見どころありますね』


 それそちらの国の人間です。あるいは影響受けた人間です。労働は罪による楽園追放の罰なのでしょうが、我が国では労働は美徳なんです。インストールされてるOSが八百万OSなんで。中にはお尻からお米だす女神とかいますが、気にもしません。その直系なんで変な民族なんです。すみません。排他的な考えはありません。古事記とかバリバリのLGB推奨です。良かったらご見聞ください。ただTとQはちょっと複雑ファンタジーすぎてよくわからないです。多分また弄っちゃうと思います。同胞がすみません。それに顔のバリエーション見てもらうとわかるんですが、バリバリの多民族国家です。一万年くらいかけてがいいですよね。急に混ぜると良くないと思うんです。棲み分けは大事かと。あ、クリスマスとかハロウィンとかバリバリ祝っちゃいますよ。神話混ざり過ぎてよくわからないですけどわからないのが良いと言いますか。一緒に飲めや歌えやが良いと言いますか。七福神とかいい感じでモロ合体してますし。合体過程はそちらと違うといいますか。悪神に仕立て上げたら誰だって怒ると思うんですよ。ええ、例えばそう、クリスマスに一人鍋こそジャスティス。それはつまり別形態のお祝いなんです。コケにも煽ってもないです。ハレの文化なんで。魔改造じゃないです。鍋×コンビニケーキは一人暮らしジャスティスなのです。今度捧げます。


『ちょっと何言ってるかわかりませんが…あれ? キミ、一度も戦ってないじゃないですか…。なのにこれだけのニビルを? 何故です? やはりバグは消し──』

 

 人間世界では初回ボーナスという釣──いや慈悲がやんごとなき御方から賜ると聞き及んでおります。おそらくそのニビルにしてもここに辿り着いたのもバグではなく仕様ではないかと。


『む。この私が見誤っていると?』


 そもそも全知全能たるかの御方がそんな手違いなんてするはずがないとそう思いませんか? つまりこの不思議な商店、いや神聖な祭壇でのこの私、咎人との会合こそが試練。貴女様のそのお疲れの様子を見るところ、さらに重ねてくるのがいつもの手口…ああ、すみませんすみません。


『ヨハネみたいに頭の中でいろいろ話すのはやめてくれません? まあ、正しい判断ですが』


 どこのヨハネさんでしょうか。確か五人くらいいましたよね…いやでも大丈夫です。どのヨハネでもバッチリこいです。明日からぶいぶいヨハネってみせますよ! とりあえず七枚くらいラブレター書きます! 不幸の手紙と受け取られる可能性の方が高いですが!


『はあ。ご自由にどうぞ。しかし…もそうですけど、おかしな魔女の台頭に魔眼バロールの変質、邪教の復活に生者の書への介入…魂の不自然な消失に、神下ろしを用いた並行世界の創出に、霊磁的アクセス。そしてバグですか…はぁ…」


 大量案件お疲れ様です!


「む。疲れてません。…まあいいでしょう。今回は予期せぬ問題事が多いですけど、試されているのは私ですか。ふむふむ。それもそうかもですね』


 幼女天使店主がそういうと、ピカッと眩い光を放ち、辺りは白より深い白に包まれました。

 なんでわかるかって? 

 だって地面が消えたんだもの。


『では[外なる神]の侵食は我々が食い止めますから、ニビルを集め、第九世界融合の阻止に励むのですよ。越境者アウトサイダー


 何それもっとkwskッ!





 そして次に目覚めたのは改札でした。


「…あれ」


 時刻はいつもの帰宅電車の時間。

 さっきまでの不思議に巻き込まれる直前ですね。


「…夢…?」


 目の前にはいつもの学園前駅の改札。

 少し考えた後、いつものようにスマホをピタッとして改札を進むと今度は不思議空間には出なかった。


「白昼夢…? いや、放課夢かな。言いにくいなぁ…」


 また変なとこに出なくて助かったけど、あのメダル、欲しかったなぁ。


 そんな感想を呟きながら、ピッとサイダー買って一息シュワっとしました。そしてダラダラとお家に帰りました。


 そして帰ってから気づいたんですが、鞄と時計はなくなってました。

 その代わりにあの変なキーホルダーゲットしてましたね。


 うーわおっ。

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