異世界ふれんず

紅緋 椛

プロローグ

 ――『フレンドシップ』。


 それは、何処にでも居るし――何処にも居ない、不思議な生物。


 自然の中から人間社会の街中まで、彼らと出会う場所は幾らでも存在する。


 人から外れた姿をしながら、人に近い知性を持った、そんな生き物。


 野生の獣から分離したような生態系を保ちながらも、人知を超えた力を持つ存在。


 初めは、人とフレンドシップ――ふれんずとの生存領域を賭けた縄張り争いから始まって。


 時の流れと共に、その関係も変化していった。


 友人であり、隣人であり、家族であり。


 脅威であり、異物であり、敵対者である。


 いずれにせよ。


 人間は彼らとの折り合いを着けながら、今日までの世界を歩んできたのだ。


 そんな何処にでも存在する神秘の生物は、されど、現実世界の何処にも決して存在することは無いのであった。


 何故ならば――それは所詮、創作物ゲームの世界の住人でしかないのだから。


 ……そのはず、だった。




        *




「――此処は、何処だ?」



 何時も通りの変わらぬ日常を送っていた筈の青年は、気付けば見知らぬ土地へと放り出されていた。




        *




「――何処を見ても、有象無象。この私に相応しき運命は、未だ手の内には無いようね」



 白銀の堕天使は、世界の低劣なる蒙昧さに退屈すらも感じていた。





        *




「私は……私は、要らない子なんかじゃ……ない……っ」



 蕾の魔女は、己の開花を今か今かと待っていた。




        *




「ふぅ……。この身を預けるに相応しい益荒男ますらおに、早く出逢いたいもんだねぇ」



 闘争の果てを求める戦士は、求道の行く末に未曽有を臨んでいた。




        *




 ――世界中では各々が、あらゆる願望を求めて彷徨う。


 故に。此度の出来事は、波紋を広げる一滴の雫。


 されど、紛うこと無き世界へ広がる――確固たる、変革なのであった。


 では、物語を紐解いて往こう。

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