第12話

(ヤバい…)


あの頃を思い出したのと、客が見た目とはウラハラに優しくて…あたしは泣きそうになった。



でも客の前で泣くなんてありえない。


それで『同情』をひくのもイヤだし、ひこうなんて、これっぽっちも思っていない。


あたしは沸き上がる感情をグッとこらえた。



『俺なぁ、前、風俗の子と付き合ってた。…恋愛って難しいなぁ…』


似合わない言葉を、その人はシンミリと言った。



あたしがそっと顔を上げると、客はなんだか…すごく寂しそうな顔をしている。



『…泡…流そっか』


あたしはシャワーを片手に立ち上がった。

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