第19話 再会
それを教えてくれたのは驚くべき人たちだったんだよ。まあまだこの時は出会ってないんだけどね。
それから更に五日が過ぎていよいよホーン様に馬車を献上する事になったんだけども、ホーン様に献上するのに乗っていくのはマズいだろうという事で、サユリのアイテムボックスに入れて貰えないかとハンル様に頼まれたんだ。
「それじゃ、私とヨウくんも王都に行く事になるんですか?」
サユリがハンル様にそう尋ねると
「うむ、申し訳ないがそうなる。だが献上する場には二人は居なくても構わない。王都を観光してくれれば良い」
と言われてサユリと僕は納得したんだ。そして僕は条件を出した。
「ハンル様、僕とサユリは転移陣での移動ではなくて馬車で王都に移動します」
王都まで馬車でゆっくりと移動すると四日ほどかかるそうなので、僕とサユリは新婚旅行のつもりでゆっくりと行きたいと考えたんだ。
「おお、勿論だとも。ヨウナシ殿やサユリ殿の思うままに王都まで行ってくれれば良い。馬車の空間拡張はグレドが既に終わらせてあるからバルとコミチを道案内として同行させよう」
おお、グレドさん、有難うございます!! 空間拡張をするのに希望はあるかと聞かれてどこまで拡張出来るのか確認してみたんだけど、何と三部屋分も拡張出来るって教えて貰ったから、最大限に拡張して下さいってお願いしたんだよね。
三部屋あるならプライベートも確保出来るしバルさん、コミチさん夫婦と一緒でも大丈夫だよね。
夜は馬車ごと自宅に飛べば安心、安全だしお風呂にも入れるしね。
「実はバルもコミチも夫婦となって二人きりで何処かに出かける暇など無くてな…… 二人に頼り切っていた私が悪いのだが。今は二人に頼らずともある程度の事は対処出来る。なのでこの機会にヨウナシ殿たちには悪いが旅行気分で出かけて貰おうと思ってな…… 済まないが頼めるか?」
ハンル様がそう言うので僕もサユリも一も二もなく頷いたんだ。薬の生産も順調だし各町、村での生産も軌道に乗ってるからね。
そうして、僕たちが王都へと向かう日がやって来たんだ。王都にはハンル様が四日後に転移陣で王都にある屋敷に行く事になってるから、僕たちは四日後以降にハンル様の王都屋敷に着けばいいらしい。
「ヨウナシ殿、サユリ殿、お二人ならば大丈夫だと思うが道中、くれぐれも気をつけてくれ。バル、コミチ、しっかりとお二人の案内をしてくれ、頼むぞ」
「はいハンル様。王都でお会いしましょう」
「ハンル様、お任せ下さい。ちゃんと安全なルートを選んでお二人を王都までご案内します」
献上する馬車は既にサユリのアイテムボックスに入れてある。僕たちはナデシコを繋いで自分たちの馬車に乗り込んだ。御者は僕とバルさんだ。
「さあ、ナデシコ行こうか。バルさん南門から出れば良いんですか?」
「そうですヨウナシ様。ナデシコ、ゆっくりで良いからな」
バルさんも暇がある時は夫婦で厩舎に出向いてナデシコとコミュニケーションを取ってくれていたのでナデシコもバルさんとコミチさんに懐いている。
馬車をゆっくりと引いてナデシコが歩き出した。領都を出るまでは時速にして八キロほどの速さで進む。南門でスムーズに手続きが済んで領都を出たら時速十〜十二キロぐらいで進み始めた。
「ヨウナシ様、ハンル様からは四日が五日でも構わないと言われております。ナデシコが疲れる事の無いようにゆっくりと進みましょう」
領都を出たらバルさんがそう言ってくれた。
「そうなんですね。分かりました、それではゆっくりと進みしょう。ナデシコ、疲れない速さでいいからね」
僕の言葉にブルルと言いながら頷くナデシコ。本当に賢い子だよ。
初日は順調に魔物や魔獣に出会うことも無く進み野営予定場所にたどり着いた僕たち。そこで僕はバルさん、コミチさんに言った。
「ここで野営せずに僕たちの自宅にお二人をご招待しますね。そこでなら安心、安全に眠る事ができますしお風呂にも入れますから」
僕の言葉にコミチさんが飛びついた。
「お風呂!? お風呂に入れるの? 旅の途中で? ホントなの、ヨウナシくん?」
「ホントですよコミチさん。さあ、行きましょう」
そうして僕は馬車やナデシコも連れて自宅へと飛んだんだ。周りの景色が突然変わってバルさんもコミチさんも驚いているよ。
「おお!! ここは!?」
「えっ!? ここ、何処?」
「ようこそ、お二人とも。僕とサユリの自宅へ」
「さあ入りましょう、コミチさん」
僕がナデシコの繋ぎを外して自由にしながらサユリと二人でそう言ったんだ。
「ここがヨウナシ様とサユリ様の……」
「凄く不思議な形の家なのね……」
まあ外観からしてこの世界では見当たらない形だからね。そんな二人を急かして玄関に入り、ハンル様やヘレン様にしたように履物を脱いで上がって下さいのくだりを行って、リビングへと案内したんだ。
そこでまた驚くバルさんとコミチさんに説明をして……
僕はお茶を入れにいったサユリの後を追いかけてある物を手渡したんだ。
「サユリ、コミチさんと一緒にお風呂に入った後にコレを塗って上げてくれるかな?」
「これは、アレよね? アンチエイジング効果を保証されていたパーフェクト·ツーだよね、あなた」
「うん。ハンル様にお聞きしたんだけどバルさんはコミチさんの年齢を気にして子供を作らないらしいんだ。ほら、日本でも高齢出産は危ないって言われてたよね? で、日本だとコミチさんはまだまだ若い三十一歳だけどこの世界だと高齢者になるらしいんだって。だから、コレでコミチさんが若返ればと思って」
「そっか!? 異世界補正だね!!」
「うん、僕もそう思ったからコレを呼んだんだ」
「分かったわ、さっそくコミチさんとお風呂に入ってくるね」
そうして、お茶を出してバルさんとコミチさんが少し落ち着いた頃合いを見計らってサユリがコミチさんにお風呂に行きましょうと声をかけた。
二人がお風呂に行った後に僕はバルさんと話をする。
「バルさん、コミチさんがお風呂から戻ってきたらびっくりしますよ。あ、部屋はちゃんと防音仕様になってますからご夫婦でどうぞゆっくりと
「ヨウナシ様、それは分かりましたけどびっくりする事とは何でしょう?」
「それは二人が出てきてからのお楽しみです」
それからバルさんからの質問に答えながら夕食の下準備を二人でしていたら、
「ヨウくん、出たよ〜。バルさんと一緒に入ってきて」
サユリの声と共に少し恥ずかしそうにしながらコミチさんもキッチンへと入ってきた。
ビンゴ! ちゃんと仕事してくれたねパーフェクト·ツー!! 肌のハリ・ツヤを取り戻して細胞を若返らせるという二つの効果があるこのアンチエイジング薬品は厚労省も認める薬品で、日本だと細胞を若返らせる効果はマイナス三〜五歳だったけど……
「コ、コ、コミチ!! えっ!? コミチであってるよな? えっ、コレは一体、どうして? いや、とても若々しくなって、そうなる前も綺麗で可愛らしかったけど、もっと!!」
うん、バルさんは女性の事が分かってるね。ちゃんと若返る前のコミチさんも褒めてるし。今のコミチさんはパーフェクト·ツーによって僕の見立てだとおよそマイナス十歳だね。二十歳頃だと思うよ。
「も、もう! あなた! ヨウナシくんとサユリちゃんが側にいるのに、そんな事を言ってないで早くお風呂に入ってきて!!」
照れて顔を真っ赤にしながらコミチさんがそう言ってるよ。うん、出来る秘書に見えるコミチさんだったけど、今はその出来る秘書に成長中って感じに見えるね。僕の性癖に…… サユリから不穏な空気が流れてきたから僕は慌ててコミチさんから目を逸らしたよ。
「あ、ああ。分かった。後で詳しく教えてくれよ」
「食事を終えて二人きりになったらね」
ご馳走さまです。
それから
ちょっと効きすぎちゃったと思ったのは食事を終えたら早々にコミチさんを連れて部屋に引っ込んだからなんだ。
「あなた、バルさんに何か飲ませたの?」
「うん、【赤マム◯】を飲んで貰ったんだけど……」
「あなたは飲まなかったの?」
悪戯っぽい笑顔で僕にそう言うサユリ。神様、僕の理性を試されてますか? 試されてますよね?
その日も僕はサユリとピッタリひっついて寝たよ。
翌朝、やけにスッキリ艶々したコミチさんと、お風呂上がりには疲れもすっかり取れた様子だったのに何故かぐったりとしてるバルさんが起きてきて、また王都への旅を再開したんだ。
こんな感じで途中の町や村でバルさんは一泊する計画を立ててくれていたんだけど、それはせずに毎晩、寝る時は自宅でって事に決まったんだよ。
コミチさんは自宅に泊まる度にスッキリ艶々になり、バルさんは【赤◯ムシ】では追いつかなくなったので、日本でも強力だった強壮剤を二日目から渡す事になったよ。
毎晩、毎晩、お疲れ様です、バルさん。
(因みにだけど、この旅を終えて領地に戻った二カ月後にコミチさんの妊娠が分かったんだよ。おめでとうございます、二人とも。)
楽しかった旅もそろそろ終わりを告げようとしていた。明日の午前中には王都に着く距離まで進んだんだ。当初の予定だとゆっくり進んで領都ペリを出てから五日後に到着する筈だったんだけど、コミチさんからのお願いもあって少し遠回りして、明日で領都ペリを出て八日になるんだ。
「ハンル様、ヤキモキしてないかな?」
僕が心配になってそう言うと、
「それは大丈夫よヨウナシくん。ちゃんと通信魔法でハンル様宛に手紙を送ったから。明日に着くのはご存じよ」
コミチさんからそう言われたよ。うん、やっぱり出来る秘書は違うよね。違った、お医者さんだったよコミチさんは。
そうだ!! 白衣をプレゼントしよう! 僕は出来る秘書さんも好きだったけど、白衣を着て颯爽とした女医さんも好きだったんだ。
サユリにも納得いく形でプレゼントをしないと怖いからね。何か理由を捻り出そうと思うよ。
そして、八日目に無事に王都へと入った僕たち。その広さに僕もサユリも目を大きく開いたよ。
「凄いね、ヨウくん、あっ、獣人さんも居るよ!!」
「おお!! ホントだね! あ、あの人はドワーフかな? あっちの人はエルフかな?」
御者はバルさんコミチさんご夫婦が買って出てくれたから、僕はサユリと一緒に馬車の窓から王都の街並みと道行く人を二人で興奮しながら見ていたんだ。
そして……
「ッ!? バルさん、ごめん!! ちょっと停めて!!」
思わず僕は叫んだ。僕の叫びが向こうにも聞こえたみたいで……
「まあ!?
そこには出会うとは思って無かった
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