第3話 チートな【自宅】

 さて、それじゃ神様が言った通り能力を確認してみようかな。


「番内さんはどこまで把握してるのかな?」


 その前に僕は番内さんに確認してみた。超絶と言って良い美少女に成長した番内さんを名前で呼ぶ勇気は今の僕には無い。けれども小さい頃から知っているからそんなに緊張はしないけどね。


「もう! 洋くん! せっかく違う世界に来たんだから心機一転して私の事も小さい頃みたいに名前か愛称で呼んでよ!」


 うん、困ったぞ…… 僕は中学生になってからそれまでサユちゃんと呼んでたのを番内さんと言い換えた。それは僕と一緒に歩いていたのを見たクラスメートがお前には勿体ない、俺に寄越せなんて言ってきたからだ。

 僕と親しいとバレるとサユちゃんに危険が及ぶかも知れないと考えて他人行儀な呼び方に直ぐにかえたんだ。


 でもそうか…… ここには約束通りならアイツは居ないし、昔みたいに呼んでも良いのか。


「うん、それじゃ昔みたいにサユちゃんって呼ぶよ」


「うんヨウくん!」


 サユちゃんの笑顔が眩しくてまともに顔を見てられないよ。本当に何でこんな僕に懐いてくれてるのかな? そんな事を思ってたらサユちゃんから返事が来たよ。


「それでね、私が把握してるのはヨウくんが神様と話をしてた部分が全部だよ。あの時の事を神様が全て見せてくれてたから」


 ああ見られてたのか。それにしても器用な神様だね、同時に存在してたなんて。でもそれじゃ大丈夫だね。


「じゃあサユちゃん。自分の能力を確認してみようよ」


「うん、そうだね。せっかくヨウくんが神様と交渉してくれたんだし、良い能力を持ってたら良いけど!」


「きっと大丈夫だよ。セレクト!」

「そうだね、きっと大丈夫だよね! セレクト!」


 僕とサユちゃんの目の前に半透明のボードが現れた。


名前∶家無威いえない 洋名視ようなし

年齢∶十六歳

性別∶男性

職業ジョブ∶ハンター

位階レベル∶1

HP∶55

MP∶30

攻撃∶21

防御∶40

武器∶ー

防具∶異世界の服

魔法∶火の魔法、水の魔法、風の魔法、地の魔法

技能スキル

【自宅】【武器適正】【防具適正】【魔法】【言語完全理解】【魔獣ハンター】

家族∶番内ばんない沙友里さゆり


 うん、分かりやすくていいね。魔法の詳細はそれぞれをタップすれば表示された。スキルについても同様だ。


 サユちゃんはどうなんだろう?


名前∶番内ばんない沙友里さゆり

年齢∶十六歳

性別∶女性

職業ジョブ∶ヒーリングマスター

位階レベル∶1

HP∶35

MP∶60

攻撃∶10

防御∶55

武器∶ー

防具∶異世界の服

魔法∶回復の魔法、補助の魔法、強化の魔法

技能スキル

【アイテムボックス】【言語完全理解】【防御補正】【見極眼みきわめ】【創造】

家族∶家無威いえない洋名視ようなし


「ど、どうかな、ヨウくん?」


 サユちゃんが僕にボードを見せながら聞いてくる。


「うん、良いと思うよ。それじゃさっそくだけど僕の自宅に行ってみようよ。良いかなサユちゃん?」


 僕は【家族】の項目をタップして確認している。僕の【自宅】は【家族】であれば一度いけば自由に出入り出来るようになるんだ。なのでサユちゃんを早く連れて行きたかった。


「うん! 私も行ってみたいと思ってたの!!」


 サユちゃんの返事を聞いて嬉しく思いながら僕はサユちゃんと手を繋いで僕の【自宅】に飛んだ。


 けれどもそこはまだ何も無い空間だった……


「お家、無いねヨウくん……」


 僕は【自宅】をタップして確認する。すると……


【自宅】

 異空間にヨウナシの考える家を自由に出現させる。敷地面積も建屋構造もヨウナシの思うままである。また中の物は使用しても無くならずにすぐに補充される。

 そしてヨウナシが思えば新たな物を備蓄する事も可能である。この自宅のある異空間内ではヨウナシが思う事を実現する事が可能となっている。

(※但しそれはヨウナシの知識の範囲内の事に限られる。)

 (例)米しかなくパンが欲しいと思えば備蓄庫に増える等。



 随分とチートな能力のようだ。僕はサユちゃんにその事を話す。サユちゃんは僕の話を聞いて


「あのねヨウくんが構わないなら平屋だけど現代風なシックな建築の家が私は好きなの。そんな風な家を建ててもらえたら嬉しいな」


 そう言う。僕は必死で考える…… 考える…… 考える…… そして、遂に結論を出して家を想像して創造した。

 これでどうだ! サユちゃん!


 柱などは檜で、外観は現代建築資材の最高峰の物を使用。(但しヨウナシの知識内の物)外観は洋風ではあるが中は木の温もりを感じられる造りとなっている。玄関を入ると廊下が一本真っ直ぐに伸びていて、右側には低い階段がある。平屋建てなので階段は僕の胸ぐらいの高さだ。右側下段は玄関前から六畳、八畳、十二畳、十六畳、八畳の五部屋。右側上段はフルフラットの一部屋となっている。

 そして玄関前から左側はリビング兼ダイニングキッチン十八畳、その地下に備蓄庫を。次の部屋は手洗いトイレ、そしてお風呂、その次は洗面所、洗濯場となっている。

 更に廊下の一番奥にも手洗いトイレをもう一つ。二つあれば二人でトイレに行きたいタイミングが被ってしまった時も困らないからね。

 お風呂は総檜造りで常に檜の香りがするようになっているよ。


 そして家の横には家庭菜園用の畑地も設けた。


 僕が出した【自宅】を見て驚き、中を見て更に驚くサユちゃん。


「ヨウくん、凄い!! コッチの六畳を寝室として貰っても良い?」


「ダメだよサユちゃん。そっちは僕の寝室で、サユちゃんはコッチの八畳で寝てね」


 最初からそのつもりだったのでそう言うとサユちゃんが「有難う、ヨウくん」とお礼を言ってくれたよ。

 部屋には僕の想像した通りの家具家電類がちゃんとある。ベッドは勿論、タンス、掃除機、洗濯機、冷蔵庫、エアコン、炊飯器等々。そして食材もいっぱいあるんだ。

 まあまた何か足りない物を思いついたら、僕が思うだけでこの【自宅】には補充されるから大丈夫だよね。


「ヨウくん、あのね…… 色々あって疲れちゃったから…… 今日はもうこのままこの家でやすまない?」 


「それも良いね! そうしよう! お風呂はすぐに入れるからサユちゃん先に入ってよ。僕は何か軽く食べられる物を見繕うよ。お風呂に入ってから軽く食べて寝てしまおう!」


「うん! 有難うヨウくん。そうするね!」


 いそいそとバスタオルと寝巻きを持ってお風呂に向かうサユちゃん。僕は心の中で固く誓う!


 絶対に覗いたりしないぞ!! と。僕はサユちゃんの事が異性として好きなんだと再確認しながらも、今の関係が壊れるのが怖くて告白なんて出来ない。もっと自分に自信が持てるようになったなら告白したいと思ってるんだ。

 だから、この世界で僕は何があってもサユちゃんを守る!


 そんな決意をしながら僕は冷蔵庫をゴソゴソと漁るのだった……


 二人ともしっかりと寝て起きたらちょっと気恥ずかしさから気まずい雰囲気にはなったけれどもそれでも朝食を一緒に作って食べる頃にはその雰囲気も霧散していたよ。


「ヨウくん、これからどうするの?」


「うん、ここにいれば絶対に安全なのは分かってるけど僕はこの世界を見てみたいと思ってるんだ。幸い神様からは何の使命もないし自由に生きていいって言われてるし、この世界を旅してみたいんだ。サユちゃんはどうかな?」


 僕の言葉にサユちゃんは頷いて同意してくれた。


「うん! 私もこの世界を知りたい! ヨウくんと二人で一緒に旅をしたい!」


 そこで僕たち二人はこの世界を旅して見て楽しんで生きていこうという事になったんだよ。


 さあ!! さっそく行ってみよう、未知の世界へ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る