竜医師シオンと【呪いのキラキラ】
◇
そして、後日。
シオン先生から、二通目のお手紙が来た。
今回も、俺が代表して読み上げた。
俺はシマシマエナガンのクッションを横に置いて、ソファに腰を据えた。
回廊のこっち側。
みんなでスローライフの南の島のゲームへログインして、またアバターで会った。
煉獄のレン。
妖精のサヤナ。
かもめのナギサ。
お腹いっぱいのチワ。
あっ、腹ペコじゃなくなってやんの!
あはは。
そして、
ナギサとチワがふざけていた。
ハグハグハグ、チュッ。
あはは!シオン先生みたいだ。まじウケる。
俺は、爆笑マークをだした。
サヤナは、やれやれポーズをした。
俺はわかる。
読み上げ係に選ばれたのは、
俺が男だからだ。
古風な先生らしいよな。
喫煙者は大嫌い。
でも、先生は嫌いじゃないぜっ。
風呂に入るし、歯も磨くからかな?
俺はギリセーフ。
でもここでアンケート取ったら、
女子は駄目だって。
みんなバツマークを出した。
あははは。
先生に教えてあげよっかなー。
◇◆◇
豆茶でも飲んで聞いてくれ。
その後の話だ。
後日の皇国新聞。
宝玉眼の彼らは解放され、白竜も解放された。
もちろん大ニュースだ。
皇国神殿の中でもごく一部の、過激派のやったことではある。
しかし、責任の所在というものがそこにあった。
人々の信仰は急激に薄れ、皇国神殿の力は急激に弱まった。
天の竜も闇の竜も、同じだった。
◇◆◇
***
そっかあ。
ポーラの友だちが解放されたなら良かったな。
でも、老巫女さんやドーラさん、神父さんたちを思うと胸がちくちくした。
みんな、アバターでも複雑だった。
だから、みんなでハグハグってした。
喜びと涙と、くるくるいろんなマークを出した。
〈混じってる〉。
***
◇◆◇
しかし、
何かの力が人々の手元に戻されていくような感覚もあった。
そしてお
それらは本来、人々が自らの内なる力で作り出せるものでもあるからだ。
もちろん、
再び力強く燃える、家々のかまどの火。
それらの一つ一つは小さくとも、
人々が手を取り協力し、
必要に応じて力を合わせることが出来れば。
それはときとして専任を凌ぐ、
大きな大きな力となることもあった。
そして、近頃の
◇◆◇
***
これは、俺たちのほうがわかる感覚かも!
今や、プロと素人の境目なんて曖昧だと思う。
稼げるか、稼げないか。
品質が優れてるか、優れてないか。
俺たちの世界じゃ、
そんなことより、
先生のいうところの物語にみんな夢中なんだ!!
俺たちは、そっちにぐっときちゃうんだよね。
センセーたちの矜持みたいに、
みんな物語を持ってる。
大切に扱ってるんだ。
センセーにわかるかな?
***
◇◆◇
ドーラは同意してくれた。
大陸中に遺された大好きな旦那さんの、愛の結晶。
その古い皇国神殿すべての輪郭線を消すことをだ。
可能なものは、地下にずっぽんと収めて、
無理なものは輪郭線を消した。
すべては、子どもたちのため。
家々のかまどの火が灯り、
子どもたちが、
温かいお風呂に笑い、ぽかぽかのお布団でぐっすり眠れる。
そうすれば、皇国神殿の輪郭線をもとに戻せる日なんて、すぐに来るわよ。
きっぱり言い切ってくれた。
短いものになるのかもしれない。
それは、これからの物語だ。
案外、ドーラ本人は人型になれるから、しれっとそこらにいるのかもしれない。
◇◆◇
***
そっかあ。ドーラさんが。
あんなにきれいな神殿が、
いっときとはいえ消されちゃうなんて、
もったいないな。
でも、みんなきっとすぐ反省するんじゃない?
だって、餅まきとか超楽しいじゃん。
みんなで作った神殿だもん!
すぐ復活させたくなると思う。
一部の変なやつが悪いんだよ!神殿は悪くないよ。
ドーラさんも、おつきの人も、
実はしれーっとそのへんに居そう!わかる。
ニコニコぷりぷりしながら、
我慢できなくて口出しちゃいそうだよね。
そっちのほうが、らしいよね、って、
サヤナが言った。
だよねえって、みんな笑った。
***
◇◆◇
輪郭線を消した神殿の守りには、諜報部員の
風雪に耐え、無理な代償を求めない美しき
回廊の向こう、君たちの世界の古の偉大な医者は、対価を払えぬ貧しい人々に、代わりに杏を植えるように伝えたらしい。胸のすく美しい物語だ。
ちょっぴり足りない闇の竜たちを仕切るには、またとない逸材だった。
彼女の人の良さが心配ではあったが、
背後には雇用主の大金持ち
傍らには固い絆で結ばれた
そしてアトラスやポーラ、キリスが居る。
なにより彼女の文様は、
ゴンゾーは、葡萄が大のお気に入りだ。
地下に引きこもり眠る直前に、説教してた。
「いいか?
好きな女に振り向いてもらうにはな?
諦めないことだ!」
「俺は百年耐えたぞ!
俺も死んだが向こうも死んだ!
そして俺が復活した!俺の勝ちだ!
凹んだときは、しっかりとメッキしてから遊びに来いよ。女はあいつだけじゃないからな。
だーっはっはっは!!」
高らかに謎の宣言をして、
ドーラに、ばっちーーーん!!とひっぱたかれたあとに、涙目で去った。
葡萄はぞっとしてたよ。はは。
(レンには参考になるかな?
どうだろうな。)
◇◆◇
***
先生、マジ、
だるっ!
ミル姉は竜好きのへんてこりんだから、
シオン先生のは、まぐれ当たりじゃない?
イケメンイケボで、三十六までふらふらしてる人に言われてもねえー、
へえー、へえー、ほーってカンジ!
また、失恋するんじゃない?って、
みんな心配してるんだからさ…。
ほらほら。
アンケートとったら、
ゴンゾーさん派三票だよっ。
サヤナの一票、シオン先生派なんだ…。
みんな、やれやれと首を振った。
サヤナは、汗をかきかきした。
葡萄さんと杏さんは、
お似合いだったと思う。
あんこクリームパンも、
豆茶缶も、一人で食べちゃったと知って、
がっかりしたけど。
ダサっ!って声出ちゃったよ。
シオン先生ほどじゃないけど、
あの人も変人だよね?
突然坊主になるし。
変な人だから竜騎士になるの?
逆?職業病?
お姉ちゃんとか、
コンビニのバイトしてたら、
ドア開くたびに、
いらっしゃいませー!って、
言っちゃうアレ?
ナギサが言い出して、
あるあるー、とか、
なにそれーと、ケラケラみんなで笑った。
***
◇◆◇
写真がたくさん届いたから、共有した。
サーフィンする水着のエルザ!!
俺の贈った帽子を被ってるんだ。俺が想像してたよりドアップだった。
ぶーっ!!と、リアルの鼻血が出た。
うそーん!!
ティッシュを慌てて探してソファからずり落ちた。ジュースをこぼしてぐちゃぐちゃになった。
ちょっと待って!!とみんなに伝えた。
恥っず!!
エルザはさ。
魔法封緘で
俺やシオン先生、アトラス先生からしたら同じ顔だ。埴輪で土偶。どストライク。むしろノーメイクが好き…、だ。
でもさ。
みんなは違う。魔法映写機を見る、クラスIIIなんてロコツだ。あのエルザが、このエルザだって、わかってないんじゃないかな?
島のみんながぐりんぐりんと振り向いて、皇国大陸中が鼻血ぶーして、魔法光杖をぶん回すんだ。
凄いんだ。
つまり、俺だけじゃないってこと!!
皇国大陸全土、信者の乙女からランダム、だけど、どうみたってランダムじゃない、
そんな選ばれし、五十一人の、ドセンターなんだ!!
◇◇◇
超ド級の、超絶美少女になるんだよ!!
◇◇◇
写真があって良かった。
選手交代!サヤナにチェンジした。
ページをペラペラ捲ってくれた。
ササッカーする白竜。
歌ってる老巫女さんたち。
トレーニング中の葡萄さんと、シマシマエナガンのクッションをもふもふする薄着の杏さんの姿もあった。エルザに頼んで俺からプレゼントしてもらったんだ。そしたら、ゲストルームの老巫女さんたちがポケットマネーで出してくれた。二人とも、ゲストルームの花壇の世話や、電球の交換を手伝ってくれるから、そのお礼なんだって。
衝撃なのは、ノーザンクロスのデスボver.シオンのモノマネする、ミルダのパパがあった!!
かっけー!!ほんものみたいだった。
ハートマークを出しておいた。
そして、天文台の小学校の入学式。
アトラスとポーラが仲良く手を繋いでいた。
アトラスは八歳の男の子になっていた。
あっ。
また賭けに勝ったのかな?
漂着した船って、カジノだって言ってたもんな。
ポーラを人間にしたときのように、
きっと手に入れたんだ。
そっかあ。
俺たちのアトラス先生、
二十四歳は、もう会えないのかな。
切なくて嬉しくて、寂しかった。
***
◇◆◇
俺たちがどうなるか、わからない。
今は、矜持という名の天秤で、
帳尻を合わせてゆこうと思う。
南の島のスローライフ。
目標は【長生き千年】!
俺はこの島で、
修繕、歌、心許せる仲間。
かけがえのない思い出を手に入れた。
それにキリスは、俺のもんだ。
俺が成長できたのは、
彼女と【名の扉】の
ええと。
前回は遺言だと、誤解させてすまなかった。
ありがとう、って伝えたかったんだ。
アリガタイっていうのは、
つまり、めったにない。
前に説明できなかったキラキラの呪いの正体は、
これだと思ったんだ。
俺は、
喫煙もするし、
嘘もつくし、
必要なら、
負けられないときってあるからな。
(とても口に出せないが、)
本当ーーーに、酷い最低の理由で、だ。
三十七でこれだ。
そして若いときは、もっと酷かった。
〈混じってる〉。
しかし、
それはそれ、これはこれ。
君たちが大事なんだ。
誰が、何言ってるんだって感じだろうけどな!!
経験則。
君の周りに
溢れている。
そう信じたほうがキラキラの力は、見つかると思う。
君たちの文様が定まり、
キラキラと元気に美しく輝く日を楽しみにしている。身体に気をつけて。
ともに、
【長生き千年】を目指そう!
それでは、
またいつか別の話で。
◇
ははっ。
チアーズって、
乾杯のことだったのかあ!
俺は疑問が解けて、すっきりした。
そして、
みんなでグラスをだして、
乾杯ーー!!ってやった。
これも、キラキラパワー!
でしょ?ね。
回廊のこっちでもやるんだ、
お
わかってるよ!!ありがとう先生!!
そして、
一斉にログアウトした。
夏休みだけど、塾や習い事や、
友だちとの約束の時間が迫っていたからだ。
俺?
俺は、ソファの始末だけだけどな!!
両親が帰ってくるまでに片付けないと!!
何だよ、そんな目で見ないでっ!
そ。
俺こっちじゃ陰キャ!
あっちじゃ、もっと陰キャな、
クラスIIIの部屋に出入りして、
シオン先生の歌番組も見まくって、
あいつらにモノマネ披露してたの!
上手なのは、練習してたからだよっ。
回廊のこっちでだってそうだ。
一年生とか二年生の一学期までは、予行練習だったの!そうなの。
二学期の夏休み明けの、
二学期から、デビューするタイプだから。
慎重派ってことで!
よろしく!!
それじゃ、
またね★
◇
▶案内板
【第四幕】3章第10話へ
https://kakuyomu.jp/works/16818093088763454808/episodes/16818093089060597414
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