17 〈13〉の小箱に入っていたのはハートのクッキー
「大好きですっ」
雪原の中心で魔女は愛を叫んだ。
マロの表情は
それでも、ふっと、やわらかく笑ったような気がする。
「
「ちょっと、待ったーっ!」
雪を蹴散らせて栗毛の馬で追いかけて来たのは、王子である。
「えっ。王子もマロさまに告白をっ」
魔女は目を丸くした。
「なんでだ?」
ほぼ転がり落ちるように馬から降りた王子は、ずぼずぼと新雪に足を取られながら、やってきた。
「ひとりが告白した際の、『ちょっと、待ったー!』は、そういうお約束です」
王子は魔女のそばに来て、
「
「いや、むしろ、冬の朝の冷たい空気で、くっきりはっきりしゃっきりしてますけどっ」
魔女は、むぅと口をとがらせた。
「いや、誰かに
「私の中の魔女の血がですね」
「とにかく、そういうことだから」
王子は
「そのうち、また会おうぞ」
マロは、ゆったりと袖を振った。
「またねー」「またねー、ゆる
それから、魔女の家に戻ってから、王子の小言が止まらなかった。
「まったく、ちょっと、わたしが来なかったぐらいで、男を連れ込むとは、お前は」
「雪で往生していたからです。人助けです」
「それで酸欠とは、お笑い草だ」
「この家、隙間だらけだから完全に酸欠にならないと、師匠が言ってましたもん」
「言っていて悲しくならないか」
『アノー』
『アドベントカレンダー
「そうだ」「そうだよ」
王子と魔女は、そうすることにした。
二人で向かい合って、
薄紅色に着色した、大きめのハートのクッキーが、王子の手のひらに乗っていた。
「こういう定番がいいな」
王子は、すぐにクッキーを一口かじったから、「あー!」と魔女は不服の声をあげた。「半分こですよねっ!」
「なんだ。欲しいのか」
王子は、かじったクッキーを魔女の口に差し出した。
魔女は、やっぱりまだ酸欠だったらしい。ぱくりと、かじっていないハートの片側に食いついた。
王子も、いつのまにか酸欠に
また一口かじってから、魔女の口元にクッキーを差し出した。
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