8. 硫黄と水と石灰と

エリアスの工房にクラウディアの薬草園から硫黄の粉末の注文が届いた日は、青空が広がる穏やかな朝でした。硫黄はエリアスにとっておなじみの材料だったため、特に驚きもせず、すぐに注文を準備しました。しかし、「また害獣よけだろうか」と考えながら薬草園を訪れた彼は、思いがけない新たな課題を持ち帰ることになります。

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薬草園での出迎え

エリアスが薬草園に到着すると、クラウディアとアンナが中庭で作業をしていました。薬草の収穫をしていた二人は、彼の姿を見つけると微笑みながら駆け寄ります。

「エリアスさん、いつもありがとうございます。」

クラウディアが言いながら、硫黄の袋を受け取りました。「ところで、硫黄の使い方で少し相談したいのです。」

エリアスは袋を渡しながら答えます。「もちろん。どんな問題ですか?」

クラウディアは困ったように説明を始めまし。「この硫黄、害虫や植物の病気には効果があるのですが、粉末だと撒いても風で飛ばされやすくて、濃すぎると作物を傷めることもあるのです。」

「なるほど……」エリアスは顎に手を当てて考え込みます。「水に溶ける形にできれば、散布もしやすくなるかもしれませんね。」

アンナが興味津々で尋ねました。「エリアスさん、それって可能なんですか?」

「試してみる価値はありそうです。」エリアスはそう言うと、すぐに工房へ戻り実験を始めることを決意しました。

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試行錯誤の実験

工房に戻ったエリアスは、硫黄の粉末を前に考え込みます。「水に溶けない硫黄を、どうやって使いやすい形にするか……」

1.希硫酸での試験

最初に試したのは希硫酸を作り、それを植物に散布する方法でした。しかし、結果は惨憺たるものだった。害虫は駆除できたものの、作物も枯れてしまい、エリアスは深くため息をつきます。

「これでは意味がない……もっと穏やかな方法を探さなければ。」

2.アルカリ性の液体の可能性

発想を変え、エリアスはアルカリ性の液体を試すことにしました。工房の棚から石灰を取り出し、粉末硫黄と水を混ぜて煮ると、液体は黄褐色に変化し、強い硫黄の匂いが漂い始めます。

「これだ……アルカリ性なら作物に優しく、害虫には効くかもしれない。」

出来上がった液体を水で薄めたエリアスは、それを薬草園に届ける準備を整えました。

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薬草園での試験

数日後、エリアスは改良液を持って再び薬草園を訪れました。クラウディアとアンナが興味深そうに彼を出迎えます。

「これは石灰と硫黄から作った液体です。水で薄めて散布してください。適切な濃度なら作物に優しいはずです。」

クラウディアは真剣な表情で頷き、すぐに試験を始めることを約束しました。

数日後、再び薬草園を訪れると、クラウディアが満面の笑みで報告してくれます。

「エリアス、素晴らしいわ!害虫も病気も治まりました。濃度を調整すれば作物に害もないし、とても使いやすい!」

アンナも興奮気味に続けました。「初めて使うときは少し怖かったけれど、薄めて撒いたら本当に効果があって驚きました。これ、もっと多くの人に広めるべきですよ!」

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製品化と地域への普及

エリアスは確信を持ちました。この液体を「石灰硫黄合剤」と名付け、農家や薬草園で使える製品として販売することを決めます。ガラス瓶に詰め、ラベルには使用法と注意書きを添えました。

「水で20~200倍に薄めて使用すること」「体についたらすぐに洗い流すこと」――彼の注意深い配慮が、製品の信頼性を高めます。

近隣の農家で試験を行うと、多くの人々が感謝の声を上げました。

「病気で枯れるしかなかった作物が、これで救われた!」

「害虫が近寄らなくなったよ。今までにない効果だ!」

エリアスの「石灰硫黄合剤」は瞬く間に評判を呼び、地域全体の農業を支える大切な資源となったのです。

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