7. 火傷と薬草園の訪問
1676年のある午後、エリアスは実験の失敗で左手を火傷し、慌ててクラウディアの薬草園を訪れました。手のひらには赤く腫れた跡が広がり、疼痛がじんじんと脈打つように感じられる。薬草園は、いつものように穏やかな空気に包まれていましたが、エリアスの足取りは少し急ぎます。
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薬草園の入口
木々に囲まれた薬草園の門をくぐると、甘い草の香りと乾燥中の薬草が混ざった独特の匂いが鼻をくすぐしました。遠くから、アンナの明るい声が聞こえてきます。
「次はこれを乾燥棚に並べてくださいね。そうそう、そのまま風通しのいい場所に!」
エリアスは少し気を緩めながらも、痛む手を見て顔をしかめました。いつもの軽やかな挨拶をする余裕もなく、薬草園の中心に向かいます。
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アンナとの出会い
エリアスが中庭に差し掛かると、アンナが籠を手に作業を終えたところでした。彼の姿を見つけたアンナは、一瞬驚いた表情を浮かべ、それからすぐに駆け寄りました。
「エリアスさん!その手、どうしたんですか?」
彼は苦笑いを浮かべながら、火傷した手を見せます。「ちょっと実験で……反応が予想以上に早くて、熱い金属に触れてしまったんだ。」
アンナは眉を寄せ、すぐに彼の腕を引いて木陰の作業台へと案内しました。「ここに座ってください。火傷にはアロエが一番です。すぐに持ってきます。」
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応急処置
アンナは作業棚からアロエの葉を一本取り出し、素早く皮を剥ぎ、中のゼリー状の部分をナイフで掬い取りました。
「少し冷たいですが、我慢してくださいね。」
そう言って彼女は、優しくアロエのゼリーをエリアスの火傷に塗り始めます。ひんやりとした感触が炎症を和らげ、エリアスはほっとした表情を浮かべました。
「アンナさん、助かります。あなたがいてくれて本当に良かった。」
アンナは頬を赤らめながらも、軽く笑いました。「火傷は錬金術師の勲章みたいなものなんでしょうけど、やりすぎはダメですよ。」
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クラウディアの登場
そのとき、奥からクラウディアが姿を現しました。作業着姿の彼女は手に乾燥中の薬草の束を持ち、状況を一目で理解したようでした。
「エリアス、また火傷?あなたの工房は忙しいのね。」
エリアスは恐縮した様子で頭を下げた。「申し訳ない。いつもお世話になります、クラウディアさん。」
クラウディアはため息をつきながらも、少し笑って言いました。「アンナに感謝しなさいね。彼女がいなければ、もっと手間がかかったでしょう。」
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アンナとの会話
応急処置が終わり、包帯で手を巻き終えたあと、エリアスは礼を言いながらアンナと少し話をしました。
「本当にありがとう、アンナさん。あなたがこうやって助けてくれるおかげで、僕の実験も続けられる。」
アンナは微笑みながら手を振ります。「気にしないでください。でも、また火傷を負ったらすぐに来てくださいね。ほかの助手たちも心配しますから。」
エリアスは頷き、少し照れくさそうに答えました。「わかった。次はもう少し慎重にやるよ。……いや、そうできればいいんだけど。」
二人の間に穏やかな空気が流れる中、クラウディアが軽く咳払いをして声をかけます。「そろそろエリアスを帰らせてあげないと。まだやることがあるんじゃないの?」
エリアスは立ち上がり、深く頭を下げました。「またお世話になりました。今度、改良した石鹸を持ってきますね。」
アンナは笑顔で見送った。「楽しみにしています。」
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