お勉強2
「ホーク、もう戻ってよいぞ。次は我ら鬼人族に代々伝わる技術について話そうかの」
ほほーん? そんなのもあるのか。
「通常であれば身体強化は偏りなく能力が向上するが、我ら鬼人族使う身体強化はそれだけではない。防御力に特化した
ん? ホーク君が言ってた金剛身ってのと微妙に違うな。なんでだろ?
「ギ、金剛身ッテ、ナンダ?」
「んん? 何処で聞いたんじゃ?」
「ホーク、言ッテタ」
「それはまた大きく出たもんじゃのう……」
「ばっ! 違ぇよ! オレ様はまだまだ金剛身には届かねえって言っただけだっての!」
「当たり前じゃ馬鹿者め。皆も知っての通り、金剛身と言うのは金剛態を極めた状態の事を言う。雷鳴態を極めたなら雷鳴脚、崩山態を極めたなら崩山掌。どれも強力で三つ全てを極めた者は、未だ伝説の中にしかおらん。もっとも、どれか一つを極められたなら、それだけで伝説に名を残す使い手と呼べるのじゃがな」
爺さんは伝説の方も話してくれた。
四方八方を敵に囲まれ、無数の刃をその身に受けながらも無傷で生還を果たした男の話。
仲間に危機を知らせるため、雷鳴のように迫りくる嵐よりも速く大地を駆けた少女の話。
一切の道具も使わず、一晩で山を崩して更地に変えた大男の話。
伝説と言うだけあって、一番地味な金剛身の話ですら眉唾物だ。
「カッカッカッ! 信じておらんのう? じゃが事実として、今でも数人の使い手がおる。斯く言うワシもその昔は雷鳴脚へと至ったのじゃがな、寄る年波には勝てんでのう……」
「嘘つけ! 昔から呪術一辺倒で転態の
「お年寄りは皆してどれか使えたって言うよね。なんでそんな嘘つくんだろ?」
「戦士長だって使えないのにね」
「ん"ん"っ、では次に魔法についてじゃが……」
「誤魔化した」
「誤魔化したね」
「やっぱり嘘だったんだ」
「ええい鬼人族定番のジョークじゃろうが! いちいち反応せんでよい!」
定番なんだ……。昔の記録を盛って話す老人は前世でもいたし、それと同じようなもんかな? 伝説級を自称するのはやりすぎ感があるが、一発で冗談だと分かるからいいのか。
「はぁ……続けるぞ? 魔法は身体強化と違って修得にも適性が必要になってくる。すぐに使えるようになる者もおれば、どれだけ修練を重ねても修得できん者もおるんじゃ」
うわマジか! じゃあこれまでの自己流瞑想も無意味だった可能性もあるのかよ。ただでさえゴブリンなんて下等生物なんだ、個人の適性くらいは持ってて欲しい。
前世はうっすらブサメンだった気がする。ならきっと三十過ぎても童貞だった筈だ。これで魔法使いの条件はクリアって事になってくれ。そうすれば未使用の息子も浮かばれる。そもそも俺が三十まで生きてたか分からない問題はこの際無視していいからさ!
「ワシは肌の色を見ても通り
お、言い訳のチャンスだ!
あんな酷い環境にいながら、何故俺が自分を鬼人の赤ん坊だと勘違いしたのか。それは大人の鬼人の肌の色が原因でもある。赤っぽかったり青っぽかったり黒っぽかったり白っぽかったりとカラフルだったのだ。はぇ~、この緑肌から変わるんやろなぁと思ってしまっても仕方がない。実際、黄色人種系の色合いから変化するのだからニアピンだよ。
「
へえ、鬼人は見た目で適性が分かるのか。あれ? でも子供は色ついてないし、大人にならないと適性は分からないのだろうか?
「皆将来どうなりたいかを考えた事はあるじゃろう。今の内に言っておくが、覚醒した先が己の目指す姿と違っていても落ち込む事はないぞ。それまでに身に付けた努力は決して無くなったりはせん。出来る事が増えるか、より得意になるかの違いじゃ」
個人の適性と種族としての適性は別って話だろうか。ゴブリンにもそういうのあったりしませんかね?
「最後に魔法を実践してみせよう。ワシは呪術一辺倒と思われとるかもしれんが、攻撃魔法も使えんことはない。制御を弛めて分かりやすくするのでな、魔力を感知出来る者はよーくと観察するようにの」
おお、ついに魔法が見れるのか! 呪術は地味だったので、いっちょ派手なのお願いします!
「
修行場の土の一部が盛り上がり形を変えた。土魔法ってやつだな。それも観察したかったから、やり直しを要求したい。
「ゆくぞ。炎よ、我が敵を燃やせ!」
爺さんの手から火の玉が放たれ、土の的に命中する。スゲーや魔法。実際に使われている所を見ると、やっぱり感動するもんだね。魔法使いたい欲がムクムクと高まっていくのを感じる。
「どうじゃ? 何か掴めそうな者がいたら試してみるとええ。的はこのままにしておくでな」
「あい!」
「なっ⁉」
なんとヤト君が炎を放っていた。それもバランスボール並みに大きな炎を。心なしか、肌の色も変化して見えるが気のせいだよね?
「な、なんと……まさかもう紅鬼へと覚醒したというのか」
驚愕の表情を浮かべる爺さん。子供達もこれにはびっくり、ホーク君なんか顎が外れんばかりに口を開け目が点になっている。
「ヤトすごーい!」
「ね、ね、もっかいやってよ!」
「だーぶ!」
再び放たれる炎。さっきよりも火力が上がっている。
天才児ヤト君は、一目見ただけで炎の魔法を覚えてしまった。
主人公交代のピンチ!
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