ゴムプール

@ultrasupermadness

ゴムプール

 最近、越してきた近所を歩いている。


 越してきたばかりの地をただ歩くと、子供のような気分になる。


 木々の生えた林、石レンガのブロック塀を挟んで向こうにある。


 のっぽな木が庭に生えた宅、柵がこちらとあちらを分けている。


 作物の植わった畑、コンクリートの道から土の地面に変わる境目。


 成人しているであろう女が、飾り気のない水着を着て、一人でゴムプールに入っているのが目に付いた。


 私はその女をまじまじと見つめ、こう声をかけた。


「あの、大丈夫ですか...?」

「は、はぇぇぇぇ!?」


 私は、気狂いと、私で、きっと世界が違うのだと思った。


「ち、違うんです! 倉庫に眠っていたプールが懐かしくて!!」

「ああ、わかったよお嬢さん、のぞいて悪かったね」

「ま、待って! そんな目で私の前を通過していかないで!?」

「あ、あぁ...うん、はは」


 私はにっこりとほほえみかけ、その先へと通過していった。


 もしもこれが実話ならどれだけ面白いだろうか。

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