第22話
もう深夜に当たる時刻、外はとても静かだった。遠くで犬が鳴く声が聞こえるぐらいで、住宅街で明かりの付いている部屋は少ない。雪は止んでいた。
「…。」
さやかと肩を並べて歩く。初対面の男と二人で歩くのはそれなりに勇気がいるだろう。健は自分に何か離したいことがあるのだろうか、と思う。
「…あのー、宮野さん。」
「何?」
さやかが上目遣いで健の表情を伺う。
「珠子は彼氏じゃないって言っていたけれど、宮野さんはどう思ってるんですか?珠子のこと。」
どうやら健の真意が知りたいらしい。友人として、珠子のことが心配なのだろう。微笑ましい。
「たまちゃ…、珠子さんのことは妹みたいに思っているよ。」
「妹?それだけ?」
「うん?…うん。」
「ふーん…。」
しばらくの沈黙が流れる。その間に、コンビニの明かりが見えてきた。夜中に見る明るさにほっとした。コンビニの自動ドアをくぐると、ふわりとレジ横のおでんの香りが鼻腔をくすぐる。空気さえも温まり、冷えた頬に優しく触れた。
「三島さん、何を飲む?」
「私はサワー系にします。」
買い物かごに、アルコール類を数本適当に入れる。それとチェイサー用にスポーツドリンクの2リットルのペットボトルを購入することにした。
健が支払いを済ませ、荷物を持つというさやかに軽い方の袋を持たせた。
「あとで、お金払いますね。」
「いいよ。ここは僕の奢りで。」
さやかは首を傾げて、そして「ありがとう」と言う。
「…珠子、かなり宮野さんを気に入ってると思うんです。」
「ん?」
カサカサとビニール袋を揺らして歩きながら、さやかが口火を切る。
「珠子は人見知りするんですよ。だけど、宮野さんにはしっかり心を開いてる。」
「それは…、光栄だな。」
さやかは頷く。
「私たちは幼なじみで、長野から一緒に進学してきたんですよ。それこそ、小さいときから珠子と一緒の時間を過ごしてきたんです。色覚異常に悩んでいることも、珠子の描く絵に対する風評も知ってます。だから、」
さやかは足を止めた。それに遅れて、健も立ち止まる。振り返ると、さやかがじっと健を見つめていた。あの、居心地の悪い視線だ。
「だから…、珠子を傷つけないでくださいね。」
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