第4話

廃村のメインストリートを通り、更に奥にある参道を抜けた先に寺があった。

その寺もすでに廃業しているのだろう、枯れ草が行く手を邪魔するように生え茂っている。水の涸れた手水や、塗装のはげた鳥居が出迎えた。

「…。」

いつの間にか無言になった健たちは、本殿の横にある獣道を見つけ坂道を下っていく。歩を進める度に土がパラパラと欠けて、道の際から崩れた。

不意に、視界が開ける。広場のような、そこには数々の卒塔婆が建てられていた。墓場だ。


等間隔に、こんもりと盛られた土。その下には今は亡き者の、遺体が収められているのだろう。あまり想像したくない光景なのは否めない。

「個人を尊重するために荼毘に付さなかったらしいけど…。結構、グロいよな。地中で腐っていくって。」

一樹が想像ついでに、うえ、と嘔吐く真似をする。

「あー…。土葬だとまだ生きてる人間も間違えて埋めたりとか、怪談に事欠かないけど。何か、そんな謂われがあんの?ここ。」

「さあ?知らん。」

健の問いに一樹は首を傾げた。

「えー。じゃあ、わざわざ知らない人の墓参りに来ただけ?」

「意外とアグレッシブだな…、お前。コックリさんでもするか?」

「二人じゃ人数不足だろ。」

小学生の頃に流行ったコックリさんの仕方なんてよく覚えていないけれど、確か三人以上の参加者が必要なはずだ。

一樹は首をひねる。

「うーん…。肝試しっぽい何かしたいよなあ。」


一樹が死んだ。

首を180度曲げ、正面を向く身体とは反対に顔は真後ろを向いていた。青黒い舌がずるりと口から飛び出して、眼球は大きく見開いて黒々とした瞳孔が開きプラスチックのような無機質な輝きを放っている。

捌かれたその遺体の腹には、臓器が無かった。

廃村の肝試しを終えた健は、無事にアパートまで辿り着いた。一樹は健が住むアパートの駐車場、愛車の中で死んでいたところを階下に住むOLに見つけられたという。

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