第4話 たまごサンドとご褒美プリン
春が終わり、夏に近づきつつある季節の早朝。
朝を迎えたメイドがする最初の仕事は、洗濯物を干すことである。この家にはメイドが5人いるけど、住み込みなのは私とメイド長だけだから、この仕事の担当は固定されている。庭とか外とかで広々と干しているイメージがあるだろうけど、想像してみてほしい。洗濯物丸見えで、生活感ダダ漏れの
洗濯物が終わると朝の掃除か朝食の準備を始める。どちらをするかは、洗濯物を干し終わった時間によるから、そこはケースバイケースで動く。今日の場合は、朝食の準備に動く。食器類を並べ、あとは料理を運ぶだけの状態にしたら待機。ご当主さまや奥さまが席に着いてから、お料理を運ぶ。
・・・陽太がいない。ということは、仕事が1つ追加される。
「陽太はまだ寝とるのか。菜月ちゃん。すまないが起こしてきてやってくれんか?」
「かしこまりました」
静かに、そして
コンコンコン
「陽太さま、朝でございます。」
起きる気配がしない、
私は、鍵の束を取り出し自室のドアを開ける。部屋の端にある陽太の部屋へのもう一つの入り口から陽太の部屋に入る。
結果的には一緒だけど、気持ちの問題だよね。うるさい目覚ましを止めて。陽太の方に目を向ける。
「うわ・・・
『
「陽太さま、起きてください。
まずは、普通に起こしてみる。起きない。よく考えればうるさい目覚まし時計でも起きないのに、この起こしかたで起きるはずがない。ベッドに座り、身体を
「陽太起きて、もう朝ですよー。」
「ンー、ムニャムニャ」
「ごはん、冷めちゃいますよー」
「ニャー」
「起きてください・・・(フー)」
陽太の耳に息を吹きかける。
「うわあぁぁぁぁ(ガバッ)」
「おはようございます。陽太さま。朝食の準備が出来ていますので、お
ひどい寝ぐせの陽太に目を合わせた後、陽太の部屋を後にする。
「菜月、俺の耳に何かしたか?」
「さぁ、それより早く準備してください。私、お腹すいてるんで。」
「・・・ああ。すぐに準備する。」
これは、ご当主さま
この場合、陽太をダイニングルームに連れていくまでがセットだ。ドアのカギを閉め、陽太を待つ。
「菜月、お待たせ。」
準備を終えた陽太が部屋から出てくる。ものの数秒で準備を整えるのだから感心する。
朝食を終えて・・・
「行ってらっしゃいませ」
陽太とご当主さまを送り出す。メイドや厨房の料理人などは、そこでようやく朝食にありつける。今日のメニューはたまごサンドとコーンスープ。デザートにイチゴがある。料理人は料理長と見習い2人の3人、メイド長と私で朝食を囲む。
「たまごサンドうまー!料理長天才!おかわり!」
「こら、菜月。食べ過ぎです。仕事はまだまだこれからなんですよ。」
「まぁまぁ、いいじゃないのメイド長さん。菜月ちゃん朝から大変だったんだから。」
「はぁ、まぁいいでしょう。」
「やったー」
「いっぱい食べろよ!それにしても、今日は一段と寝起きが悪かったんじゃないか?」
「全っ然起きませんでした。」
「ガハハハッ。
料理長は、たまごサンドと一緒に小さなカップを持ってきた。
「これは・・・プリン!」
「卵がすこし余ったんで頑張る菜月ちゃんへのご褒美で作ってみたんだ。とはいえ、見習い2人が作ったから味は
「料理長、ひどいっすよー」
「菜月ちゃん。ちゃんと美味しいから安心してね。」
素朴な味のたまごプリン。朝に食べるスイーツとしては最適解だと思う。でも、食べ過ぎて午前中は仕事にならなかったのは、ここだけの秘密。
メイドの執事~財閥の御曹司が大好きな同い年メイドに仕えるお話~ 未知 推火 @Torime1128
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