第3話 手作りクッキーとアールグレイ
食事の配膳を終えて、陽太を呼びに向かう。
コンコンコン
「陽太さま。お食事の準備が出来ました。」
お坊ちゃま呼びは・・・もうしないでおく。流石に
「すぐ行く」
ダイニングルームへ続く
特に言葉を交わすこともなくダイニングルームに
私は、メイド用の夕食を手に取り、
今日の
片付けはしないのかって?それは
食後の誰もいないダイニングルームでは誰が食器を下げても変わらないからね。
メイドは基本的に自室で食事を取ることになっている。
料理人がお弁当みたいな感じで作ってくれていて、それを取って自室で食べる。
でも、出来立てだし中身は食卓に並んでいるものと同じだから美味しい。
部屋も一人部屋だし、お風呂も大きい。生活に困ることはまずない。
学校?行ってない。
でも、生きるのに困っているわけでもないし勉強したくなったら陽太の部屋からこっそり本を借りればいい。
この家に拾われた時にメイド長に色々叩き込まれたから
育ての親でもあるメイド長には感謝しかない。
夕食を食べ終え、容器を机の端に置く。明日の朝に厨房へ返しに行けばいい。
ガチャ
隣の部屋からドアを開ける音が聞こえる。陽太が部屋に戻ってきたみたい。
陽太と私の部屋は隣同士だ。なぜかは知らない。
パチンッ
陽太が部屋に戻ってから少し時間が経った後、私は指を鳴らす。
指鳴らしは私の数少ない特技で高く、鋭い音がする。
ガチャ
部屋の端にあるもう一つのドアが開く。なぜかこの部屋には隣の部屋との間にドアがあり、部屋を行き来できるようになっている。古い家であるせいか、ご
しかし、念のためご当主さまの許可を得て、
つまり、私が
いつでも部屋に
「お呼びでしょうか。お嬢さま。」
スーツ姿の陽太が仕事終わりの若メイドの部屋に足を踏み入れる。
お察しの通り、メイドの仕事が終わるとき
見た目は執事というよりは
いつもは、もっとなりきってくれているのだけど心なしか少し
執事の陽太は部屋にある電気ポットでお湯を沸かし、慣れた手つきで紅茶を入れる。
私のもとに紅茶を置き、肩を
「執事、もしかして怒ってる?」
「いえ・・・別に」
やり過ぎたとは全く思ってないけど、このままにしとくのも
「執事、目を
「えっ・・・なんで?」
「いいから」
「・・・?かしこまりました」
状況を理解できない様子を見せながら、言われるがまま陽太は目を瞑る。
「口を開けて」
「ん?ああ・・・」
「ん!?(ザクザク)これは・・・クッキー?」
「そう、スノーボールクッキー。お昼に作ったの。美味しい?」
「・・・うん。」
陽太の顔が少しずつにやけたような笑顔になる。
「よかった。じゃあ、今日のお坊ちゃま呼びのことは、これでチャラね。」
「なっ・・・」
「さっきまで引きずってたでしょ?ほら、クッキーまだあるから一緒に食べましょ?紅茶は自分で入れてね。」
「・・・かしこまりました。お嬢さま。」
執事が自分の紅茶を入れている間に部屋の中央にあるテーブルに移動する。
少し背の高いちゃぶ台くらいの小さなテーブル。時間によって立場が逆転する関係。私はこの家から出たことがないけど、この関係が不思議なものであることは分かる。
これが私の過ごす日常の
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