第19話

その後、捜査が進展していく中で、青島たちはさらに謎めいた人物に出会うこととなった。事件の背後にいる大きな力を追い詰める中で、青島たちの前に現れたのは、予想もしない存在だった。


ある日、情報を得るために訪れた古びた一軒の風呂屋。店内に入ると、どこか懐かしさを感じさせる湯気が立ち込めていた。思わず肩の力が抜け、青島は一瞬だけリラックスした気分になるが、すぐにその場の空気の重さを感じ取った。風呂屋の隅に座っていたのは、ひげを生やし、長いコートを羽織った中年の男だった。


「こっちだ。」その男が、穏やかな口調で青島たちを見ながら言った。


「お前は…?」青島が慎重に問いかけると、男はニヤリと笑いながら答えた。


「風呂屋の親父だ。」男の言葉はどこか冗談めいていたが、目の奥にはどこか計り知れない鋭さが潜んでいた。青島たちは、何とも不思議な男だと感じながらも、警戒心を抱きつつその男の言葉に耳を傾ける。


その風呂屋の親父――名を坂田と言った。坂田は青島たちに、事件の真相に迫るための手がかりを与えると言っていたが、彼の目的は一体何なのか。青島たちはその人物の真意を図りかねていた。


「実はな、この街で起きている事件の背後に、かなり深い闇がある。」坂田が低い声で言うと、その場の空気が一気に緊張感を帯びた。「お前たちが追っている爆発事件も、その一部に過ぎない。」


青島は息を呑んだ。坂田が知っていることに、すでに事件の核心に迫る何かが含まれているのかもしれないと直感的に感じ取った。坂田は、なぜ風呂屋にいながらそのような情報を握っているのか。そして、どうして青島たちに教えるのか、疑問は尽きなかった。


「お前、なぜこんな場所でこんな話を?」青島は思わず尋ねた。


坂田は肩をすくめ、「風呂屋っていうのは、ただの湯屋じゃないんだよ。情報が集まる場所でもある。いろんな連中がここに来ては、必要な情報を交換していく。それに、僕の仕事は、ただ湯を沸かすことじゃないんだ。」と答えた。


その言葉の意味を理解する間もなく、坂田はさらに続けた。「お前たちが追っている組織は、単なる犯罪者の集まりじゃない。あの爆発事件に関わっている者たちは、裏で何か大きな計画を進めている。だが、その計画の全容はまだわからない。お前たちが知りたいことがあるなら、どうしても僕と手を組まなければならない。」


青島はその言葉を重く受け止めた。坂田のような人物が手を貸してくれるなら、事件解決に向けて大きな助けとなるだろう。しかし、彼の目的や動機が不明確なままで手を組むのは、少しばかり危険な気もした。


「お前が本当に協力するなら、俺たちも協力するが…。」青島は一呼吸おいて、続けた。「ただし、隠し事があれば絶対に許さない。情報は全て共有しろ。」


坂田はニヤリと笑いながら、湯を沸かすために準備をしながら言った。「それは当然だ。でも、これだけは覚えておけ。この街で起きる出来事の中で、俺の知る情報はほんの一部に過ぎない。そして、この風呂屋でしか聞けない情報もある。お前たちがその情報を引き出せるかどうかは、君たち次第だ。」


その言葉に青島は深く頷き、和久や他のメンバーも周囲を警戒しながら坂田の話に耳を傾けていた。風呂屋の親父が何者か、その正体が気になるところだったが、今は彼の情報が必要だった。坂田が本当に信頼できる人物なのか、青島にはまだ確信が持てなかったが、協力を求めるならば、それに従うしかない。


「わかった。」青島は言った。「だが、何か裏があるようなら、すぐにこの場を去るつもりだ。」


坂田はただ静かに頷いた。「いいだろう。その時は、君たちの判断に任せるさ。」


風呂屋の中で交わされた言葉が、次第に事件の核心に迫る鍵となるかもしれない。坂田の背後に隠された真意、そして彼が握る情報が、今後どれだけ重要になるかは分からない。しかし、青島は確信していた。真実に近づくためには、どんな人物とも手を組まなければならない時があるのだと。


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