第16話
現場は次第に混乱を深めていた。警察官たちは必死に爆発の跡地を調査し、遺留物を収集し始めた。しかし、青島の胸には次第に不安が広がっていった。彼は捜査の進行状況を見守りながらも、どこか冷徹な目線で周囲を見渡していた。すると、突然、無線が鳴り響いた。
「青島、聞こえるか?」
その声に反応して、青島は無線を取り出し、耳を傾けた。「こちら青島、どうした?」
「現場から報告だ。東武署管内の捜査官、安藤が…殉職した。」無線の向こうで、冷たい声が告げられた。
青島はその言葉を一瞬、呆然と聞いた。安藤という名前は、彼にとってもよく知る警察官だった。何度も現場で顔を合わせ、共に捜査を進めた仲間だった。しかし、その安藤が――。
「ど、どうして?」青島は急いで尋ねた。
「爆発現場の近くで捜査中、突如として別の爆発が起きた。安藤はその爆風に巻き込まれたらしい。」無線の声が続けた。「救助が遅れたため、現場でそのまま命を落とした。」
青島は一瞬、言葉を失った。胸の中で、怒りと悲しみが入り混じった感情が渦巻いていった。安藤は真摯に捜査に取り組む、正義感の強い刑事だった。そんな彼が命を落とすような形で、この事件に巻き込まれるなど、信じがたかった。
「安藤が…」青島はもう一度、呟いた。その胸中には、仲間を失った悲しみとともに、この事件がどれほど危険なものであるかという現実がしみ込んできた。
その時、和久が近づいてきた。「青島、大丈夫か?」と声をかける。
青島はしばらく沈黙してから、深く息を吸い込んだ。「ああ、安藤が…。彼がこんな形で…。」
「俺たちは、安藤のためにも、この事件を解決しないといけない。」和久が静かに言った。
その言葉に青島は頷いた。「そうだな。安藤の死を無駄にしないためにも、この事件の真相を突き止める必要がある。」
すると、再び無線が鳴り響いた。「青島、他の捜査員が安藤の遺体を発見した。遺留品に関してはまだ詳しく調査が進んでいないが、安藤が持っていたメモ帳が発見されている。その内容が少し気になる。」
青島は無線を握り締めるようにして聞いた。「メモ帳には何か書かれていたのか?」
「はい。『爆発の背後に見えない手がある』とだけ書かれているようです。」無線の声が続いた。
その瞬間、青島は激しく胸が締め付けられるような感覚を覚えた。安藤は、爆発の真相に何かを感じ取っていたのだろう。それを訴えようとしていたのかもしれない。だが、それが命を落とす原因となってしまった。
「見えない手…。」青島はそのメモ帳の言葉を反芻しながら、周囲を見渡した。何か、ここに潜んでいるものがある。安藤の死は、それを証明するものとなった。
その時、ドクター・ゲロが静かに口を開いた。「安藤が何かを掴みかけていたのは間違いないだろう。だが、彼の死が示すのは、この事件の規模がいかに大きいかということだ。裏で動いている者たちは、我々を消すことも厭わない。」
スネークも無言で頷いた。「安藤が気づいていたことを知っている者がいる。だが、もう後戻りはできない。」
青島は強い決意を込めて言った。「安藤の死を無駄にしない。彼が見つけた手がかりを必ず掴み、真実を突き止める。」
その後、安藤の遺体が運ばれる中、現場に集まった警察官たちは、安藤の死を悼みながらも、気を引き締めて捜査を続けた。青島は、仲間を失った悲しみを胸に、再び現場の調査を進める決意を固めた。そして、安藤のメモ帳に書かれていた「見えない手」の意味を解き明かすことが、今や彼に課せられた最も重要な使命であると強く感じていた。
「安藤、必ずお前の思いを継ぐ。」青島は心の中で誓い、次なる一歩を踏み出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます