第14話

ドクター・ゲロの冷徹な目線が、青島たちを一瞥する中、突如として現場の緊張感が一層増した。彼の言葉には、確かに説得力があった。しかし、その背後に潜む不安の影を拭いきれない青島は、思わず深呼吸をした。


そのとき、現場の遠くから警察車両のサイレンが鳴り響き、さらに多くの警察官が集まってきた。車から降りてきたのは、東武署の刑事たちだった。その中でも特に目立ったのは、二人の刑事だった。


一人は、背が高く、顔に傷が残る獄門(ごくもん)という名の刑事。彼の表情には、長年の経験と厳しい捜査による冷徹さが漂っていた。もう一人は、若干優しげな印象を与えるが、目つきは鋭く、日向(ひなた)という名の刑事だった。日向は、どこか青島に似た直感力を持つとされ、獄門と組んで数々の難事件を解決してきた。


「青島、和久、レオン、スネーク、ドクター・ゲロ…こんなところで会うとはな。」獄門刑事は、その低い声で言った。彼の目は、すぐにその場に集まったメンバーを把握していた。


「獄門刑事、お前までここに来たのか?」和久が少し驚いた表情を見せた。「こっちはもう手が足りてないんだぞ。」


「それは俺たちの仕事だろう。」獄門は平然と言い放った。「ただ、これだけの事件にお前らだけじゃ心もとないだろうと思ってな。」彼の眼差しは、ドクター・ゲロに向けられ、無言の威圧感を感じさせた。


日向刑事は一歩前に出て、青島に向かって軽く頭を下げた。「青島さん、久しぶりですね。あ、和久さんもお元気そうで。」彼の穏やかな声には、何かしらの安堵感を感じさせるものがあった。


青島は少しだけ肩の力を抜いて、「日向、獄門、君たちもこの事件に関わっているのか?」と尋ねた。


獄門は無表情で頷いた。「ああ。どうやら、この爆発事件は単なる事故じゃないようだ。今、東武署の捜査本部で調べているが、まだ手がかりは少ない。だが、裏で動いている連中がいるのは確かだ。」


その言葉に、青島は少し驚いた。「東武署で捜査本部が立ち上がったのか?」


「当然だ。」獄門はにやりと笑った。「爆発があった場所が東武署管内だしな。だが、どうもお前たちの方が先にこの現場に到着しているみたいだ。どういうことだ?」


「その辺の話は後だ。」青島は少しだけ眉をひそめて答えた。「それより、君たちが来たということは、何か新しい情報でもあったのか?」


その時、日向刑事が口を開いた。「実は、爆発の跡地から不審な遺留物が見つかっているんです。爆薬に使われている成分とは違う、未知の化学物質が混ざっていた。それが何かを示唆しているかもしれません。」


青島はそれを聞いて眉をひそめた。「未知の化学物質…それが爆発とどう関係している?」


「それがわかるのは、もう少し捜査が進んでからだろう。」日向は穏やかに答えた。「でも、あれが偶然ではないことは確かだ。何か意図的に仕掛けられた可能性が高い。」


その時、獄門が低い声で言った。「ここで浮かび上がるのは一つの疑問だ。爆発自体が目的だったのか、それとも爆発を起こすことによって、何かを隠蔽するための手段だったのか?」


青島はその問いに答える前に、目の前にいる面々を見渡した。レオンも、スネークも、そしてドクター・ゲロも、ただの警察や捜査官ではない。彼らはそれぞれ別の動機や背景を持ち、まったく異なる視点から事件に関わっている。


その時、ドクター・ゲロが静かに口を開いた。「君たちの捜査が進めば、すぐにわかるだろう。だが、私の言葉を聞け。これはただの爆発事件ではない。裏で動いている者たちが、この街を揺るがすために仕組んだ大きな計画の一部に過ぎない。」


スネークも、じっとその言葉を聞いていた。「ゲロが言う通り、君たちが持っている情報だけでは、この事件の本質には迫れない。だが、私が手を貸せば、おそらくすぐに核心に迫ることができる。」


青島はその言葉を胸に、再び現場を見渡した。爆発の現場にはまだ煙が立ち込め、何もかもが未解決のままだ。だが、これからどこに向かうべきか、少しずつ見えてきた。


「わかった。」青島は決意を込めて言った。「お前ら全員、協力しろ。ただし、情報を隠すようなことがあれば、それぞれに責任を取ってもらうことになるからな。」


獄門は無言で頷き、日向も真剣な面持ちで青島を見つめた。「了解だ。」


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