第13話
青島、和久、そしてレオン、スネークの四人が爆破現場に足を踏み入れていたそのとき、突然、周囲の空気がまたも変わった。現場の警察や消防隊員たちが一瞬動きを止め、何か異様な気配を感じ取ったような様子を見せた。
その直後、遠くから車のエンジン音が響き、すぐに黒いSUVが現場に急停車した。ドアが開き、そこから降りてきた人物は、まるで無敵のような風格を持った男だった。彼は、白衣を身にまとい、手には何冊かの分厚い書類を抱えている。だが、最も目を引いたのはその顔だった。
「ドクター・ゲロ…」青島は思わず呟いた。その名前は、裏の世界でも恐れられた人物だった。
ドクター・ゲロは、冷徹な目を持つ科学者であり、かつては一部の政府機関に所属していたと言われている。だが、今ではその名は、裏社会の深層でのみ通じるものとなっていた。彼の研究は常に倫理的な境界線を越えており、その結果として数々の恐ろしい技術を生み出してきた。
ゲロは冷たい目で周囲の混乱を一瞥し、ゆっくりと歩みを進めた。その動きは、どこか余裕を感じさせるものだった。まるでこの現場が自分のために用意された舞台であるかのように。
「青島、和久、レオン、スネーク…」ドクター・ゲロは、四人を一人ずつ見つめ、名前を呼びながら、まるで彼らの存在を当然のように受け入れていた。「どうやら、君たちもこの事件に巻き込まれたようだな。」
「お前が来るとは思わなかった。」青島は警戒心を隠さずに言った。
ゲロはわずかに微笑みながら、書類を手に持ったままゆっくりと語り始めた。「私が来たのは、君たちがまだ真相にたどり着けていないからだ。君たちはただ、表面的な爆発事件を追っている。だが、その裏にはもっと深い陰謀が隠れている。」
レオンは一歩前に出て、その冷徹な目でゲロを見つめた。「お前が言う『陰謀』とは、一体何を指している?」
ゲロはゆっくりと目を細めた。「爆発は偶然ではない。誰かが意図的に仕組んだものだ。だが、それだけでは終わらない。この爆発の背後には、私の研究が関わっている。」彼の言葉には、まるで自信を持った響きがあった。
和久が顔をしかめながら口を開いた。「お前の研究? それがどう関係するんだ?」
ゲロは軽く肩をすくめ、白衣の袖をまくり上げながら答えた。「私は、破壊的な技術の研究をしてきた。爆発物、化学薬品、さらには生物兵器に関する実験も行っている。だが、今回はそれらとは少し違う。君たちが見逃しているのは、この爆発に使われた特殊な装置だ。」
青島はその言葉に眉をひそめた。「特殊な装置?」
「そうだ。」ゲロは続けた。「爆発そのものが目的ではない。あれはただのカモフラージュに過ぎない。実際に狙われていたのは、爆発現場に埋め込まれたテクノロジーだ。もしその装置が無事に作動していたら、都市全体が大規模な影響を受けていた。だが、幸運にも爆発が予期せぬ形で起き、計画が少しずれた。」
その言葉に、青島は強い不安を感じ取った。もしゲロが言う通りであれば、この爆発事件は単なる序章に過ぎない可能性がある。裏で何か恐ろしい計画が進行しており、それを防ぐためには、さらに多くの情報が必要だ。
「お前はそれをどうして知っている?」青島は冷静に問い詰めた。
ゲロは一瞬だけ目を細め、冷たい笑みを浮かべた。「私はただの研究者ではない。裏社会と繋がりを持ち、情報を集めることに長けている。君たちが解決しようとしている事件の背後には、私がかつて関わった組織の影がある。だから、私も協力しに来たのだ。」
スネークが静かに言った。「君の協力が本当に必要なのか? お前が関わることで、状況がさらに複雑になる気がする。」
ゲロは冷静にその言葉を受け流し、再び一歩進んだ。「君たちがどう動くかは自由だ。ただし、私がいなければ、君たちが本当の敵にたどり着くのは難しいだろう。」
青島はその言葉を真剣に受け止めながらも、心の中で何かが引っかかっていた。ゲロの言うことが本当であれば、彼の協力を得るのが最も合理的かもしれないが、彼の過去に関わる危険性を考えると、すぐには信用できない。
「わかった。」青島は慎重に答えた。「だが、君が本当に協力するつもりがあるなら、すぐにでもその情報を教えてくれ。時間がないんだ。」
ゲロはゆっくりと頷き、「それなら、まずは君たちにとって最も重要な場所から始めよう。」と言って、再び書類を取り出した。そして、彼が次に示した場所、それが事件の核心に迫る手がかりであることを、青島は感じ取った。
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