第12話

青島と和久がレオンの後を追いながら、爆発現場に足を踏み入れた。その周囲はまだ煙に包まれており、警察や消防隊が慌ただしく動き回っていたが、レオンの姿を追う者は少なく、彼の周りに漂う異質な雰囲気が一層強調されていた。


突然、青島の耳に、足音が近づいてくるのが聞こえた。振り返ると、暗い影のような人物が素早く近づいてきていた。その男は、黒いミリタリージャケットを着込み、サングラスをかけたまま、無駄な動きなく歩いていた。まるで周囲の喧騒とは無関係に、ただ一人で目的を持って動いているかのような印象を与えた。


「誰だ…?」青島は思わず警戒心を強めて言った。


レオンが立ち止まり、振り向きもせずにその人物に目を向けた。声を荒げることなく、淡々と答える。「あれは、スネークだ。」


「スネーク?」和久が眉をひそめながら尋ねた。「聞いたことはあるが、あいつは…」


レオンはその問いに答えなかった。スネークが彼らに近づいてくると、その場の空気が一変した。スネークはレオンをじっと見つめ、冷徹な表情で一言、「調査は進んでいるか?」と短く言った。


青島はその人物のオーラに圧倒されながらも、冷静に尋ねた。「お前も、この爆発事件に関係しているのか?」


スネークはしばらく黙った後、ゆっくりと答える。「この事件に関しては、俺が関わっているわけではない。ただ、動向には常に注意を払っている。」彼の目は一切揺らぐことなく、青島の目を見つめていた。


和久はその冷徹な雰囲気に圧倒され、少し後ろに下がる。「お前も情報を持っているのか?」


スネークはわずかに口角を上げ、煙草をくわえ直してから答えた。「俺はただ、事態がどう展開するかを見守っているだけだ。ただし、君たちが捉えきれていない何かがあることは知っている。それを突き止めるのは君たちの仕事だ。」


青島はその言葉に反応する前に、スネークの目に何か別の意図を感じ取った。その冷静さが、どこか不気味に思えた。スネークが持っている情報は、青島にとっても重要な手がかりとなるかもしれないが、それを求めるには、かなりのリスクを伴うことを意味している。


「お前、何を知っている?」青島は思い切って問いかけた。


スネークはにやりと笑い、煙草の煙を吐き出しながら答える。「知っていることがある。それを話すことはできないが、君たちが進むべき方向を示すことはできる。だが、それには君たち自身の決断が必要だ。」彼は、青島と和久を交互に見つめながら、言葉を続けた。「もし真実を追い求めるつもりなら、俺と一緒に動くしかない。ただし、君たちがどこまで覚悟を決められるかが重要だ。」


青島はその言葉に胸が締め付けられるような感覚を覚え、和久もその言葉の裏に潜む深い意味を感じ取った。スネークの言う通り、今回の事件が単なる爆発事件に留まるはずがないことは明白だった。その背後にはもっと大きな闇が潜んでいる。だが、その闇に足を踏み入れることは、どれほどの代償を払うことになるのか。


「お前と動くのは…簡単じゃないぞ。」和久が警戒しながら言った。


スネークは軽く肩をすくめ、無表情で答えた。「簡単かどうかは、君たちが決めることだ。ただ、もし俺を信用するなら、君たちが持っている情報を無駄にはさせない。」


青島は深く息を吸い込んだ。レオンの冷徹な眼差しとスネークの不気味な落ち着き、そのどちらもが彼にとっては未知の領域だった。しかし、この爆発事件が単なる偶然ではないと確信しつつあった青島は、二人と手を組むことが次第に不可欠だと思い始めていた。


「お前らと動くには覚悟が必要だ。」青島は言った。その言葉に、スネークは少しだけ微笑んだ。


「覚悟があるなら、すぐに動け。」


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