第4話

その日の捜査がひと段落し、青島がデスクに座りながら次の手順を考えていると、突然ドアが勢いよく開き、強い足音が響いた。


「おう、青島、ちょっといいか?」


青島が顔を上げると、そこには堂々とした姿の大門刑事が立っていた。大門は、刑事部隊の中でもその強引で豪快なやり方で知られているベテランで、誰もが一目置く存在だ。


「大門刑事…」青島は少し驚きながらも、すぐに態度を改めて立ち上がった。「何かありましたか?」


大門はそのまま無遠慮にオフィスに足を踏み入れ、青島のデスクに目を通した。「お前、相変わらずこんなとこでゴチャゴチャしてるのか? さっさと次の捜査に行かないと、またお前の足元すくわれるぞ。」大門は腕を組み、青島を上から見下ろすような態度で言った。


青島はその言葉に少し不快感を覚えるものの、大門の存在感には逆らえなかった。「そんなに急ぐ必要は…」


「いいか、青島。」大門は突然声を低くして、真剣な顔になった。「今回の件、上が少しあんたに注目してる。お前の捜査が今後どう進むか、周囲の期待もあるってことだ。」


青島は少し戸惑いながらも、その言葉の重さを感じ取った。「期待、ですか…?」


「そうだ。」大門はむしろその言葉に興奮したように続けた。「お前、若いくせに結構やるじゃないか。けどな、恋愛に関しても捜査と同じように冷静に判断しなきゃダメだぞ。感情に流されてる暇はない。お前もわかるだろ?」


青島はその言葉に一瞬戸惑った。大門が恋愛についてこんな風に話すとは思わなかったからだ。「恋愛と捜査を一緒にしないでくださいよ…」


大門はにやっと笑って、「お前、恋愛に関してはまだまだ青いな。でもな、これからは覚悟を決めて行動しろよ。どんな時でも冷静でいることが大事だ。」と、厳しくも温かい目で青島を見つめた。


青島は少し黙ってその言葉を考える。大門が言っていることは、ただの捜査のアドバイスではないような気がした。それは、人として、そして刑事としての在り方についての指摘でもあった。


「わかりました。」青島はやや力を込めて答えた。その言葉には、今までのような無責任な軽さはなく、少しだけ決意が込められていた。


大門は青島の反応を見て、満足げにうなずくと、「まあ、あまり焦るなよ。」と軽く肩を叩いた。「お前にはお前なりのペースがあるだろうからな。だが、これからはもっとしっかりしたやつに頼られることになる。プレッシャーにも負けずに頑張れよ。」


青島は大門の言葉を胸に刻み、少しだけ背筋を伸ばしてみた。確かに、大門が言う通りだ。これからは、もっと自分のペースで進んでいかなければならないし、決断を下す時が来るかもしれない。


「大門刑事、ありがとうございました。」青島は礼を言った。


大門はにっこりと笑い、「おう、じゃあな。」と言いながら、オフィスを後にした。


青島はしばらくその場に立ち尽くしていた。大門の言葉が、今の自分にはどこか重く響く。捜査の中で培った冷静さを、恋愛においてもどう活かすべきか。それを考えると、まだまだ答えは見えてこないが、少しだけ覚悟が決まったような気がした。


その後、青島は再びデスクに座り、事件に戻ろうとしたが、心の中では大門の言葉が頭から離れなかった。恋愛も捜査も、冷静に判断し、前に進んでいくべきだ――その通りだと、青島は心の中でうなずいた。


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