第35話 荷物持ちと停学終了?

「そういえば忘れてたけど七海さんの助言はどうすればいいのか」


 天音さんが後藤さんに俺と美空の考えを伝えてもらった翌日俺はそんなことを考えていた。

 七海さんが今まで俺に伝えてくれた情報はどれも正確だった。

 だから無視するわけにもいかないし、かといって鵜呑みにし過ぎるのも危険な気がする。


「どうすればいいんだよ」


「そんなに頭を抱えてどうしたのかしら?」


「いや、何でもにないよ。ただ人生について考えてただけ」


「絶対嘘よねそれ。まあ、言いたくないのならいいのだけどね」


「言いたくないってわけじゃないんだけど。まあ、気にしないでよ。本当に大したことじゃないからさ」


 不確定情報が多すぎるのに天音さんにこの話をして不安にさせたくない。

 それに俺がしばらくの間天音さんから離れないようにすればいいだけだし、何より最近は天音さんとずっと一緒に行動してるからあまり気にしなくてもいいのかもしれない。


「そういう事ならいいわ。それよりそろそろ行くわよ」


「うん」


 今日は日曜日。

 天音さんと出かけることになっていた。

 まあ、俺はどこに行くか知らないんだけど。

 前に聞いたら秘密としか言われなかったし。


「いまさらなんだけど空って好きな人とかいるのかしら?」


「なんだよいきなり。当てつけかよ。天音さんは少し前に俺が彼女に浮気されて捨てられたってこと知ってるじゃないか」


「それはそうなのだけど、ほら昨日デートに言った後輩の女の子のことが好きなのかなと思ってね」


「ないない。知り合って間もないし何よりあの子は腹の内が分からなすぎる。あんな事件に巻き込まれて好きになるほど俺はマゾじゃないよ」


 昨日デートに行ったのは動画の礼ってだけで本当にそれ以外に他意はない。

 確かに七海さんは可愛いと思うけど性格に難がある気がする。


「それは確かにそうかもしれないわね」


「なんでいきなりそんなこと聞くのさ」


「少し気になっただけよ。でもそうなのね」


「そういう天音さんはどうなのさ。好きな人とかできた?」


「あら、そんなわかりきっていることを聞くのかしら?」


 どうやら愚問だったようだ。

 天音さんにそんな相手ができるなんて確かに想像できないしな。


「いえ、何でもないです」


「そうよね」


 今度からは絶対に天音さんに恋愛関係のことを聞くことはやめようと思った。


「というか、今日はどこに行くの?」


「それ聞くの遅くないかしら?もう家を出てるのに」


「前に聞いたら秘密って言われたから」


「あら?そうだったかしら」


「そうだよ」


 まさか秘密にしていたことを忘れていたとでもいうのだろうか?

 もしそうなら大した場所ではないということで安心できるかもしれない。

 少なくとも昨日のようなことは起きないと。


「普通に買い物よ。最近は三人分の食材がいるから買い出しに行きたくて」


「なるほど。確かにいつも天音さんに作ってもらってるしな。つまり今日は荷物持ちってことでいいのかな?」


「不満かしら?」


「まさか、天音さんと出かけられてうれしいよ」


 天音さんといると安心するし何よりも天音さんは信用できる。

 それに七海さんの助言のこともあるし。


「ふ~ん。それならよかったわ。今日はいっぱい食材を買う予定だからたくさん荷物を持ってね?」


「ああ。任せておいてくれ」


 この後は特に何事もなく買い物が終わった。

 普通に意味わからないくらいに食材を買い込んだため帰り道に死にそうになったのはここだけの話。


 ◇


「おはよう一ノ瀬さん」


「おはよう柳君」


 世界中の全員が憂鬱を感じるであろう月曜日がやってきてしまった。

 とはいっても前のような針の筵というわけではないしクラスに話せる人がいるから気は楽ではある。


「そういえば、停学になった人がどれくらいで戻ってくるか知ってたりする?」


「ううん。わからないけど多分来週とかじゃないかな?」


「そっか、ありがとう」


 つまり、あいつの顔をあと一週間後に見ないといけないわけか。

 なかなかに不愉快だな~


「おはよう空」


 俺が憂鬱な気分になっていると正面から一番聞きたくない声が聞こえてきた。

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