第6話 瑠奈の心変わり
(瑠奈視点)
私には大切な幼馴染がいる。
彼とはいつも一緒にいて将来結婚の約束もしてた。
彼は優しいし紳士的だし誠実で一緒にいて本当に楽しい。
だから、こんな生活がいつまでも続くって思ってた。
「どうしたもんかな~」
私は今とっても悩んでた。
問題は彼の誕生日に何をプレゼントするかだ。
幼馴染なんだから彼がどういったものが好きなのかは大体知っている。
でも、何をもらったら喜ぶのかはあんまりわかってない。
男性と女性では感性が違うし男性にプレゼントを渡したことなんてほとんどないから悩むのだ。
「あれ?もしかして瑠奈か?こんなところで何してるんだ?」
「ああ、悟君。奇遇だね」
「おう。で、こんなところで立ち止まって何を見てたんだ?」
彼は藤田悟君。
私や空と同じ小学校でそこから高校までずっと一緒だ。
そんな悟君は空の親友でよく二人で遊びに行っているのを知ってる。
「いや、空の誕生日プレゼントを買いに来たんだけど何を買えばいいのか迷ってて。悟君は何をあげたらいいと思う?」
悟君なら空とずっと一緒にいるし好みとかも知ってるかも!!
「え~とな。言いにくいんだけど、まず瑠奈が今見ているようなぬいぐるみはちょっと違うような気がするぞ。さすがに男子高校生にメルヘンなぬいぐるみはちょっとな」
そう言いながら悟君は苦笑いを浮かべていた。
むぅ~絶対に良いと思ったんだけどな~
悟君が言うならそうなんだろうし。
「そうなの?じゃあ、これはやめとこうかな。じゃあさ、悟君ちょっと付き合ってよ!私だけで選んだら変な物を選んじゃいそうだしその点悟君と一緒なら間違っても変な物を選ばずに済みそうだからさ」
「そういう事なら全然いいぜ。俺も正直暇だったしな。空の誕生日プレゼント選びなら付き合うぜ。というわけでとりあえずこの店は違うからやめようか。さすがにここの商品は女子向け過ぎるからな」
悟君は少し気まずそうに言っていた。
確かにこのお店は女の子が来るような雑貨屋さんなんだけどここじゃあいいものは見つけられないか~
少し残念に思いつつも私は素直に違うお店を見て回ることにする。
「瑠奈は毎年あいつに何を渡してたんだ?」
「ん?いつもはね、さっき見てたぬいぐるみとかあげてたかな」
「空はなんていってたんだよ」
「すごく喜んでたよ?いっつもありがとうって言ってくれてたな」
毎年同じようなものをあげてるけど空は変わらずに心底嬉しそうに喜んでくれてた。
でも、今年から付き合い始めたから違うものを選ぼうと思った。
だから長時間悩んでたんだよね~
毎年同じものをあげるのもなんだしね。
「あはは。まあ、空ならそういうだろうな。あいつは瑠奈のことを溺愛してるし」
「ふふ~ん。ラブラブカップルでうらやましいでしょ?」
「どうだか。で、あいつの誕生日プレゼントだったか。それなら財布とか普段使いできるようなもんをあげたらどうだ?日常的につかえるから喜ばれるんじゃないか?」
「財布か~」
確かに今まで普段使いできるようなものをあげたことは無かったな。
「気に入らないか?」
「いや、どんな財布がいいんだろうと思ってね」
「あいつなら黒とか落ち着いた色合いのものが好きだと思うぜ?」
「なるほど。よく知ってるんだね悟君」
「まあな。これでももう10年くらい親友やってるからな」
悟君はふふんと胸を張って自慢げに笑っていた。
思えばこの時からよく悟君と二人で遊びに行くことが増えたような気がする。
付き合って二年目の夏休みに私は悟君に告白された。
正直な話すごくうれしかった。
幼馴染である空も大切だったけど男としての魅力は悟君のほうがあると思うし。
お試しで付き合ってみるのもいいかな?
そう思って私は悟君の告白をOKした。
「まだ、空に別れを切り出さないのか?」
「う~ん。家族ぐるみの付き合いだからね。下手な理由で別れたら家の居心地が悪くなるんだよね」
「へぇ~そんなもんか。でも俺もいつまでも間男でいたくないんだけどな」
「私が悟君を選ぶって疑ってないんだね?」
「だってそうだろ?それとも瑠奈は俺と空だったら空のほうを選ぶのか?」
悟君と付き合い始めて三か月くらいのころに悟君にそう言われた。
私の気持ちはもう決まっていたけど空に別れを切り出すのはなかなかに難しいんだよね~
両親に何言われるかわかんないし。
「それはないけどさ。幼馴染って結構厄介なんだよ?別れたらすぐに両親に嗅ぎつけられるんだからさ」
「そういうもんなのか。大変なんだな」
「そうだよ。それに私と悟君の関係が知られたら本当に怒られちゃうし」
「へぇ~。そういえば瑠奈はクリスマス暇か?」
「暇なわけないでしょ?一応表では私空と付き合ってるんだからもう誘われてるよ」
11月くらいにはもう空からクリスマスに遊びに行こうと誘われていた。
ちょっと面倒だったけど角を立てたくなかったし一応OKした。
「だろうな。クリスマス俺と遊びに行かないか?」
「話聞いてたの?悟君」
「聞いてたさ。聞いててなお俺はお前を誘ってるんだ。ダメか?」
「う~ん。まあ、いいよ。空には前日に予定が入ったっていえばいいし。私も悟君といたほうが楽しいからさ」
「おっけ~じゃあクリスマス楽しみにしてる」
「うん!私も楽しみにしてるよ」
◇
最悪だ。
まさかクリスマスに悟君とデートしてるところを空に見られるなんて思ってもなかった。
私も勢いで空を振っちゃったけどこのままじゃあおばさんに私が浮気してたことがバレてその話が私の両親のところまで届いたら面倒なことになる。
「どうする?見られちまったわけだが」
「本当にどうしよう。このままじゃかなり面倒なことになるかも」
「じゃあ、先手を打つしかないんじゃねぇか?例えばおばさんに空に無理やり迫られたって言うとかな」
確かに。私にはもうそうするしか選択肢がない。
やっと空を振れたんだからこのまま悟君と幸せになりたい。
「そうだね。確か今はおばさんたち旅行に行ってるはずだから帰ってきたら言ってみようかな?」
「いや、少し時間を置いたほうがいいんじゃないか?すぐに言うと少し嘘くさいだろう?ちょっと時間をおいてから悩んでる感じに言ったほうが信憑性が高いだろう?」
「それもそうだね。じゃあ、始業式の朝くらいに言いに行こうかな。空のことだからおばさんたちに今日のことを話せないだろうし」
「だな。そんなことよりもせっかくここまで来たんだから楽しもうぜ?」
「そうだね。じゃあ行こうか」
そう言って私たちは再びホテルに向かって歩き出した。
その後は普通に年を越してそのまま何事もなく始業式の朝を迎えた。
学校のほうは既にL〇NEとかのメッセージアプリで私と悟君で噂を広めている。
おばさんに話したときはすっごく驚いたような顔をしてたけどすぐに私の言うことを信じてくれた。
正直もう少し息子を信じてあげてもいいんじゃないかと思ったけど騙してる私がいう事でもないかな。
「瑠奈ちゃん大丈夫だったの!?」
学校についてすぐに私はいつも話していた女子生徒たちに囲まれた。
どうやら噂は完全に広まってるみたい。
それに加えて疑われることなくしっかりと信用してくれてるみたい。
「う、うん。悟君が助けてくれたから私は無事だよ。でも、悟君が居なかったらと思うと、怖い」
できるだけ弱弱しく少しだけ目に涙をためながら話す。
そうするだけでみんな私のことを被害者として扱ってくれる。
「大変だったね」
「もう心配ないよ!」
「そうそう私たちがいるからね」
そう言ってみんなが私を慰めてくれる。
ふと、空の机を見るとそこには花瓶や遺影、落書きや画鋲といった虐めのフルコースのような光景が広がっていた。
他にもクラス中で空の悪口が聞こえてきて悟君の作戦は成功したみたい。
「そんなことしてない!」
気が付けば空が教室に来ていてそう叫んでいた。
でも、クラスのみんなはそれを聞き入れずにずっと空を糾弾していた。
そのすぐ後に空は教室を飛び出していってしまった。
罪悪感はなかった。
私はこのまま悟君と幸せになれればそれでいいと思った。
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