第18話: 異次元での激闘①
アストリアはセラフィスのスキャニング能力を駆使して、城内を慎重に進んでいった。
多くの兵士を倒し、ついに"喜の魂"の場所へと辿り着く。
しかし、そこで待ち受けていたのは、予想外の空虚な部屋だった。
「何も...無い?」
アストリアは周囲を見渡し、もはや冷静さを欠いていた。
"喜の魂"があるはずの場所には謎の違和感が広がっていた。
彼が一歩踏み出した瞬間、空気が凍りつくような感覚に襲われた。
『──来る!』
セラフィスが警告する間もなく、突如として風の刃がアストリアに向かって襲いかかる。
彼は素早く身をかわし、反撃しようとするが、その風の刃は異常な速度で連続して襲いかかる。
「何だ…!?」
アストリアは全神経を集中し、周囲を探すが、敵の姿は見当たらない。
ただ、風の中に何かを感じ取ることはできた。
だが、その正体を掴むことはできなかった。
『セラフィス!』
セラフィスが瞬時に憑依する。
「これは…鏡面世界からの攻撃だ!」
セラフィスの声が驚きに満ちている。
「鏡面世界から!? つまり、敵はこの世界にはいないということか?」
その時、アストリアは気づいた。
今までの戦闘でも感じたことのない、異次元からの攻撃。
「誰だッ!!」
アストリアが叫んだ途端、空間が歪み、風が再び渦を巻いた。
アストリアは見えない敵との戦闘を続ける中で、次第に追い込まれていった。
見えない敵の風属性の攻撃は予想以上に強力で、何度もアストリアの体を掠める。
それに対して、アストリアの雷属性の剣撃も強力だが、風の刃の素早さには劣っていた。
「このままじゃ…!どうしても、俺には追いつけない!」
アストリアが肩で息をしながら剣を振るう。
その時、セラフィスの声が脳裏に響く。
『アストリア、僕の精神エネルギーを使え!君の雷撃と合わせれば、違う次元への突破が可能かもしれない!!』
セラフィスの言葉に、アストリアは瞬時に理解する。
セラフィスのスキャニング能力は、物質的なものだけでなく、次元をも感知する力を持っていた。
その力とアストリアの雷属性の剣撃を組み合わせることで、次元の壁を突破できるかもしれない。
試してみる価値は十二分にある。
「分かった!」
アストリアは再び剣を構え、セラフィスの指示に従う。
剣を握り締め、雷の力を全身に集中させると、セラフィスの精神エネルギーが流れ込んでくる。
次元の壁が見え始め、アストリアの目の前に、鏡面世界へと続く扉が浮かび上がった。
「今だ!」
アストリアが一気に雷を解放し、剣を振るった。
「トランス・グレッシオ(次元突破)!!!」
二人が同時に叫ぶ。
緑の雷光が放たれると同時に、次元の壁が裂け、アストリアは鏡面世界へと引き込まれる。
鏡面世界に足を踏み入れた瞬間、周囲の景色は一変した。
現実世界とは異なり、全てが歪んだ反射の中に存在していた。
『これが…鏡面世界か。』
セラフィスの冷静な声がアストリアの耳に届く。
だが、その瞬間、
「この世界では私が絶対だ!お前達に勝ち目はない!」
不気味な声がこだまする。
「マチルダと"喜の魂"を返してもらう!!」
アストリアの叫びに、ルドルフは冷ややかな笑みを浮かべた。
「"喜の魂"はもう私のものだ。そして、あの娘も。」
その言葉にアストリアの心が震える。
「この娘が私を欺き、出し抜こうとしていることなど、初めから見え透いていた。愚かにも、私の大事な物と一緒に逃亡しようとしていたのでな。ちょっとしたお仕置きだ。私は彼女を単なる存在として飾っただけだ。絵画のように、永遠に。」
その言葉を聞いたアストリアの胸が苦しくなる。
マチルダが絵の中に閉じ込められたという事実に、言葉が詰まった。
「そんなことをして…!」
ルドルフの周囲に渦巻く風が一層激しくなり、アストリアは避ける暇もなくその風の刃を次々と受け止めなければならなかった。
しかし、セラフィスはスキャニング能力を駆使し、異次元空間内でルドルフの動きを察知する。
「これで終わりだ!」
彼の沸々と湧き上がる怒りで能力が進化。
未だかつて見たことのないような雷電が彼を包み込む。
「フルメン・デイ(神の雷)!!!!!」
風の攻撃の軌道が見えると同時に、アストリアはその隙をついて雷の一閃を放つ。
アストリアの雷撃がルドルフの風の壁を打ち破り、ついにルドルフに致命的な一撃を与える。
ルドルフは驚きの表情を浮かべ、鏡面世界の空間に崩れるように消えていった...。
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