舌を出した天使の話

藻ノかたり

舌を出した天使の話

ロネストラは意地の悪い天使で、いつも人間を小ばかにしてアカンベーをしていました。それを知った神様は罰として、彼に醜い角を生やし、目もギョロリとさせ、天使の象徴である翼を小さくした上に、彼の舌を出たまま引っ込められないようにしてしまいました。


その姿はとても滑稽で、天使仲間はもちろんの事、人間にもその姿を侮られ、彼は嘲笑の的となりました。傷ついたロネストラは、誰の前にも姿を現さなくなりました。


そんなある日、いつものように落ち込んで、雲の上に寝転んでいた彼がふと下界に目をやると、小さな女の子が原っぱで一人泣いている姿が見えました。どうやら親とはぐれてしまったらしく、その涙は原っぱに池を作ってしまいそうなほどでした。


最初は無視をしていたロネストラですが、とうとう我慢が出来ずに女の子の元へと降りて行きました。彼が話しかけると女の子は泣くのをやめ、彼の顔を見てやがてクスクスと笑い出しました。でもそれは、あざけるような笑いではなく、心の底からの笑顔でした。


やがて遠くで女の子を呼ぶ母親の声がしたのて、ロネストラが雲の上に帰ろうとすると、女の子は「ありがとう、天使さん」と言いました。嫌われ者だったロネストラは、はじめて”ありがとう”と言われ、心にとても温かいものを感じました。


その様子を見ていた神様は「お前も随分と反省したようだから、元の姿に戻してやろ」と言いましたが、ロネストラは「いいえ、神様。どうか今の姿でいさせてください。私の姿を見て子供たちが笑顔を取り戻すのであれば、それは私にとって至福の悦びです」と言いました。


いたく感心した神様は、彼を子供たちの守護天使に任命しました。それ以来、今も世界の何処かで、ロネストラは子供達に笑顔を与えているそうです。


【完】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

舌を出した天使の話 藻ノかたり @monokatari

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ