第45話出産に向けた準備と決断 そして、9・11テロ事件の影響
信州旅行から帰ってきて、残りの休みは旅の疲れを落とすのに当てて、休暇が終わると、またいつもの生活が戻ってきて、楽しかった旅行の想い出を胸に、会社にお土産を持っていって旅の話を休み時間にしたり、みんなでお土産を食べたりして、無事に一日の仕事を終えて帰宅。それからしばらくすると、今度は盆連休に入って、さと子の出産が、10月末に控えているということもあって、あまりもう動き回らないほうがいいだろうということで、家の周りで、のんびりと連休を過ごして、8月末の妊産婦検診に、私もついて行ったのであるが、産婦人科の先生からは
「特に今のところ、異常は認められない」
ということで、まずは一安心。おなかの中の赤ちゃんの様子をエコーで見せてもらったのであるが、元気に手足を動かしている様子が見て取れた。このエコーを見せてもらったときに、おちんちんがついているのが見えたので、
「間違いなく男の子」
と、思ったのであるが、産婦人科の先生は
「男の子か女の子かお教えしましょうか?」
と聞かれたので、さと子は
「どっちなんだろう」
という顔をしていた。私は男の子と分ったので、
「さっき、おちんちんがついているのが見えたんで、男の子でしょ?」
というと、
「分っちゃいましたか」
というので、やっぱりと思った私である。
妊産婦健診から帰って、男の子ということもはっきりしたので、どんな名前がいいか、賢の名前をつけるときに使った、人名事典を引っ張り出してきて、息子と同じで、男の子らしくということを考えて、これにしようと決めた私たちである。次男の名前には、広大な台地を明るく照らし出す、太陽のような人生を歩んでほしい。そういう願いをこめて
「悠」
と、命名した。その後、9月に入ってからの妊産婦健診でも、大きな異常などは見当たらず、出産は自然分娩にするか、帝王切開にするか先生に聞かれた。賢の出産のときが逆子だったため、帝王切開になったのであるが、そういう経緯を話すと、帝王切開のほうがいいだろうということで、10月22日に帝王切開が行われることになった。こうして悠の誕生日も決まったわけで、後は出産の日を待つだけとなった。
そして、2001年の盆連休も終わって、いつもの生活が戻ってきて、9月になって幼稚園も再開されて、賢も元気に幼稚園に通うようになった。平凡な毎日が続いていたのであるが、2001年9月11日、アメリカニューヨークの世界貿易センタービルに、2機の航空機が突っ込むという、同時多発テロ事件が発生した。このほか、1機がアメリカ国防総省・ペンタゴンに激突し、もう1機もハイジャックされて、ホワイトハウスを目指して飛行し、乗客の気転により、途中で墜落させるという事件が発生した。私はこのとき夜勤で、真夜中の午前0:30分からの昼休み休憩中、この事件を知ったのであるが、このときたまたま、事件発生時に、賢は寝付けずに起きていて、眠くなるまで、さと子と一緒にテレビを見ていたそうである。飛行機がビルに激突する瞬間も、そして、翌朝のテレビニュースで、激突されたビルが崩れ去る瞬間も見ていたようである。
翌朝、賢は幼稚園に行ったが、幼稚園での様子が少しおかしかったと、担任の先生からの連絡帳への書き込みがなされている。どんな感じだったかというと、いつもならブロックを積み上げたり、教室で絵を描いたりして遊ぶことが多いのであるが、この日はブロックを積み上げたかと思うと、ガシャガシャ-ンと、突然ばらばらに崩して、不安そうな顔をすることが見受けられたということであった。他の幼稚園に通っている子供たちの中にも、あの衝撃的なニュースをリアルタイムで見た子が何人かいたそうで、情緒が不安定だった様である。確かに小さな子供たちにとっては、あの瞬間の映像は大きなインパクトがあって、恐怖を感じるものだっただろうと思う。私も、リアルタイムではないにしろ、あの瞬間の映像を見た時は、何かの映画の宣伝かと思ったくらいである。現実に起こった出来事だと知ったときは、大人である私でさえ、恐怖を感じたくらいである。ましてや幼稚園に通う子供たちが、あのような衝撃的な映像を目撃して、普通でいられるわけがないと思った私。なので、連絡帳には
「あの衝撃的な映像を見てしまったため、精神的に不安定になっているのかもしれません」
と、返事を書いて幼稚園に提出した。あのような衝撃的なニュースは、いつ飛び込んでくるか分らず、こちらとしては防ぎようがないので、それからしばらく、賢の気持ちが落ち着くまでは、賢の前では、なるべくテレビをつけないようにしていた私たちである
なので、賢もしばらくは、楽しみにしていたアニメがみられないので、ちょっと不機嫌そうにしてたのを、今でもはっきりと覚えている。
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