第43話車旅の爽快な山岳ドライブ

松本市で宿泊して次に向かったのが、まだ一般車両の通行が認められていた乗鞍エコーライン。松本から飛騨高山方面に向けて車を走らせて、途中の新島々あたりからだんだん山岳道路らしい雰囲気に変わってきて、乗鞍岳の山頂付近まで、実に爽快なドライブを楽しむことができた。この日は天気もよく、乗鞍岳もくっきりと見えていた。ここには天文ファンならよく知られている、乗鞍コロナ観測所があって、太陽活動の様子をつぶさに観測できる。ただ、一般公開はされてはいないが。

 乗鞍岳山頂付近で、昼食をかねて休憩。多くの観光客で賑わっていた記憶がある。ここは、乗鞍岳以外にも高い山がいくつも連なっており、綺麗な山岳風景を楽しむことができる。ここからは下り坂となって山を降りて木曽方面に下って、木曽地方の中心である木曽福島に到着。ここで木曽漆器を見たいというので、民芸品店に立ち寄って木曽漆器の器を買って帰り、松本方面に向けて車を走らせて、前日泊まったホテルにチェックイン。温泉に浸かって足を伸ばして、疲れた体を癒して夕食を済ませると、長距離運転の疲れが出てきたのだろうか、あっという間に眠りについた覚えがある。

 今回のドライブでは、賢もたいしてぐずることなく、車に乗るのが好きだったので、ずっとおとなしく車に乗っていた。確かこのドライブで出かけたのが、賢がはじめてホテルで泊まるという経験じゃなかったかと思う。

 次の日は中央道・名神高速・中国道・山陽道経由で山口に帰る私たちであった。楽しかった長野県への勤続10周年のドライブ旅行。最終日は松本のホテルを確か8時ごろ出発したんではなかったかと思う。松本市内を走り抜けて、中央自動車道に入って、小牧方面に向かって車を走らせていると、来るときとは逆方向に景色が流れていく。木曽駒ケ岳や、中央・南両アルプスの山並みや、伊那谷の風景を見ながら恵那山トンネルに突入。このトンネルは日本の道路用トンネルでは有数の長さを誇り、抜けるまでの時間が非常に長く感じられた。このトンネルを抜けると長野県に別れを告げて、岐阜県に入り、小牧ジャンクションが近づくにつれて次第に住宅が密集し始めて、小牧ジャンクションで名神高速に入って、再び岐阜県に突入。関ヶ原付近で休憩。さらに天王山・西宮付近・姫路付近で休憩を取って岡山県の吉備サービスエリアで休憩と給油。そのあとは福山・宮島で休憩を取って帰宅したのが夜の8時過ぎだったと思う。帰宅して、すぐにお土産を持って、大家さんのところに伺って、お土産を渡して、無事に帰ってきたことを報告。さと子は、

「いちいちなんでそんなことせんといけんの?」

と久しぶりに悪態をついていた。誰だって、どこかに出かけて、帰ってきて、知らん顔されたらいい気はしないと思うので、私たちが留守の間、家の周りの見回りとかして下さった、大家さんに対してきちんと挨拶するのが筋である。そういうことはきちんとするように注意して、お土産を渡して、近所の人にも挨拶をしてお土産を渡して、家に帰って風呂に入って布団の中に入ると、800キロ以上運転した疲れからか、あっという間に眠りに落ちていった私であった。賢も初めての長距離ドライブだったのであるが、ぐずるわけでもなく、楽しそうに外の景色を眺めていた。普段は寝つきの悪い賢なのであるが、この日だけは布団に横にさせると、あっという間に眠ってしまった。

 こうして4泊5日のドライブが終わって、残りの休日は疲れを落とすために使って、いつもの生活が戻ってきた私たちであった。

 ただ、一番最後の日になって、さと子が大家さんへの挨拶を巡って、悪態をつくというのは予想外だったが。

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