第34話障害児の受け入れ先探しの苦悩

幼稚園での一件があっていこう、私がさと子に対して厳しい態度で、普段の自分の行動・言動を見つめなおすように注意して、それからは少しずつではああるが、言動も、攻撃的な言動が減って、態度も変わってきたのかなぁという感じを受けていた2000年の年末。この頃の私たちの家族にとって大きな課題だったのが、4月から賢をどこの幼稚園に通わせるかということであった。自閉症という障害の可能性がある。しかもこの前の幼稚園の一件で、元嫁は間違いなく、要注意人物としてマークされている。しかし、何か行動を起こす前から尻込みしていても仕方がないので、市内の幼稚園で、車で通える範囲にある幼稚園は片っ端から相談してみた。しかし、どこも、障碍児を受け入れたことがないということで断られてしまい、最後に残ったのが家のすぐ近くにある幼稚園と、家から車で5分ほどのところにある幼稚園であった。特に熱心に話を聞いていただいたのが車で5分くらいのところにあるT幼稚園。この幼稚園の園長先生に話を聞いたところ、この幼稚園でも、今まで障碍児を受け入れたことはなかったそうである。ただ、これからは障碍児教育にも本腰を入れて取り組もうと、職員会議で決めたところだったみたいで、私が

「息子には自閉症と言う障害があるかもしれないんです。まだ正式な診断は出ていませんが、精神科医の先生の予備診断や専門家の話などを総合的に考えると、たぶん間違いはなさそうです。それに自閉症はその発生のメカニズムも解明されておらず、根本的な治療法法もない障害です」

と、私が知っている限りのことを説明した。幼稚園の園長先生は、

「それなら、今から教員に対して勉強させます。みんなで力を合わせて息子さんも、お父さんお母さんも、教員も、みんな一緒に成長していきましょう」

と言っていただけた。最後の最後で幼稚園の入園先が決まり、ほっとしたしだいである。このことを私の両親に話すと

「無事に決まってよかったね。この前のことがあってから、どうなるかと心配してたけど、無事に幼稚園には入れるんじゃね」

と喜んでくれました。そして、私は仕事の有給をとって、賢が通うことになる幼稚園の様子を見ておきたいと思い、幼稚園に許可を取って普段の様子を拝見させてもらった。子供たちが元気に遊んでいる様子等、生き生きとした子供たちを見ていて、ここで賢も楽しい幼稚園生活が送れたらいいなと思いながら家に帰った私である。

 自閉症児を育てるにあたって、色々な困難を乗り越えていく漫画、光と共に…を読んでいて思ったのが、障碍児を育てるという観点から、障碍のある乳幼児を預かってくれる施設が少ないということを実感させられたことである。ひかるとともに…では、光君が幼稚園に入園する年になっても、なかなか受け入れ先が見つからなくて大変な様子が描かれていたが、それは私たちも経験した。本当に障碍のある乳幼児を受け入れてくれるところは、賢が幼稚園に入園するころはまだまだ少かった。賢が幼稚園を卒園して来年で21年が過ぎるが、障碍児教育で、障碍のある子供たちが安心して幼稚園や、学校に通える環境が、もっと増えていってくれたらいいなと思う私である。息子は通える幼稚園があっただけでも幸せだったのかもしれない。

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