第33話教育方針の再考と自己責任
幼稚園での一件があって、私はさと子に対して、改めて夫婦で話し合う必要があると思い、賢を私の実家に預けて、夫婦で話し合いの場を設けた。さと子が幼稚園の先生に対して言ったこと・やったことがどれだけ大勢の人に迷惑をかけているか、これから賢を育てていく上で、何をしなければいけないのか、何をやってはいけないのか、そういったことを話した。まず幼稚園の先生にたいして行ったことは、相手の人格を傷つけ、一生消えない心の傷を負わせたこと。それに対してどのように責任を取るのか。私は常日頃から厳しく・口すっぱく繰り返し注意していたのが
「自分が言ったこと・やったことに対して生じた結果には責任を取るように。責任を取れるかどうか考えたら、自分が今言おうとしていること・自分が今やろうとしていることが本当に大切なことなことか、やらなくてはならないことなのか・言わなければいけないことなのか、冷静に判断できるだろう」
そう言うことを伝えた。それを踏まえて
「お前は幼稚園の先生にたいしてどう責任をとるつもりか?」
と聞くと、
「私も言いすぎたから素直に謝る」
そう言っていた。そして、自ら電話の受話器をとって幼稚園に電話をして謝罪の言葉を述べていた。しかし先生の心はすっかり自信をなくされてしまっていたようで、その後退職されたそうである。そして、私は続けて
「お前は自分が思ったことを全部口に出してしゃべってしまわないと気が済まんのじゃろうけど、お前の言ったことで今までどれだけの人が傷ついてきたと思うか?お前は自分が思ったことを全部口に出してすっきりするじゃろうけど、言われたほうはどれだけ苦虫をつぶすような、どれだけ腸が煮えくり返るような思いを今までしてきたかわかるか?これから賢が大きくなって、外との接触がこれから増えてくるときに、お前がそんなんじゃったら賢が困るぞ。たぶん、今回の件で市内の幼稚園全部にお前は要注意人物としてマークされるじゃろう。これから賢が幼稚園に入って、社会生活の基礎を身につけて行かんといけん時に、どこの幼稚園も受け入れてくれんかったらどうするよ。賢はただでさえ自閉症というハンディーを抱えていて、幼稚園に入るのが難しいかもしれないのに、親であるお前が息子の首を絞めるようなことをしてどうするんか。もっと落ち着け。」
そう言うようなことを言って聞かせた記憶がある。こんな子供に対して説教するようなことをいい年した大人に言わなければならないと思うと実に情けなかった私である。
このことは賢を実家に預けるときに私の両親にも話していたので、当然私の両親も怒り心頭。私の顔に泥を塗ったといって烈火のごとく怒って、電話でさと子に対して激しい怒りの声を上げていた。今回のことで、私から説教されて、さと子は私の話を静かに聞いていた。これから少しずつではあるが、さと子なりにどのように賢を育てていったらいいか、考えるようになってきたようで、私が仕事でいない間も外に息子を連れ出して遊ぶようになり、自閉症のセミナーがあるという情報を入手すると参加するようになったり変化の兆しが見え始めてきたのであった。
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