第32話モンスターペアレントとの対峙

元嫁のくそばばぁ発言に対して激高した私の母は、しばらくさと子を私の実家に出入りすることを禁止した。しばらくはさと子とかかわりたくないというのが母の本音であった。そりゃ当然だろう。体調の悪い孫を心配して病院にいくように言って、くそばばぁと言われたのであるから。そのあと私は家に帰ってからさと子に対して、

「子供のために何をどうしたらいいのかもっとよく考えてから物を言え」

そう言い聞かせました。それに対してさと子はわかったといっていたが、本当のところは、私の言うことなんか全く聞いていまはいなかった。

 自閉症の疑いがある賢を今後どのように育てていくか、夫婦で話し合った結果、同じ年代の子供がいる幼稚園に賢を預けてみるのはどうかということになり、2歳半であったが、市内の幼稚園を当たってみて、借家から車で15分ほどのところにある幼稚園が受け入れても言いという返事だったので、さと子が幼稚園の様子や、教育方針等を聞いてきて、具体的に10月に入ってから入園させるということが決まった。そして園児服や体操着など幼稚園で必要なものを一通りそろえて、入園した。私は仕事の都合でどうしても休めなかったので、さと子が幼稚園に連れて行って、いったん帰宅したようである。そして幼稚園に迎えに行く時間となり、賢は機嫌よく周りの子供たちと遊んでいたことや、落ち着いて過ごすことができたことなどが、先生から告げられた。しかし、その幼稚園生活はたった一日で終わりを告げることになる。家に賢とさと子が帰宅して、着替えを済ませて、賢の体にちょっとした、何かで擦ったような小さな傷ががついていることを見つけたさと子は、幼稚園に連絡した。賢のひざの辺りに傷があるけど心当たりはないかと、受け持っていただいた先生に聞いたそうである。先生も心当たりが無いようで、まったく要領を得ない感じに腹をたてたさと子は、散々先生に対して暴言を吐いたそうである。さと子の話では

「1時間くらい文句を言ってやった」

そうで、その間先生は何もいうこともできずに、さと子の次から次に飛び出してくる暴言をただひたすら聞くしかなかったようである。そりゃ、幼稚園で子供たちが遊べば、ちょっとした小さな傷や怪我というのは多かれ少なかれあると思う。それに腹を立てて、先生の人格まで否定するようなことを言って、結局その先生はさと子から言われた暴言が元で、幼稚園の先生を辞められたと、後に入園することになる幼稚園の先生から聞いたことがある。

 私はさと子がそのようなことをしているとは夢にも思わず帰宅すると、

「明日から幼稚園には行かんから」

というので

「何で?」

と私が聞くと、

「ここに傷があるじゃろ。これは幼稚園の先生がわざと傷つけたんよ」

というので、さっぱり話の筋道が見えない私は

「はぁ?」

という感じで聞いていて、

「お前な、幼稚園の先生がそんなことをして何の得になるよ。馬鹿じゃねぇのか」

等と話をしていると、その幼稚園の園長先生から電話があり、私もだいたいのことが理解できてきて、話を聞いていてさと子のやったことに、賢を受け持っていただいた先生に対して申し訳ないというのと、これからどうするのか尋ねられたので、

「さと子が数々の暴言を吐いて迷惑をかけたことに対して申し訳ないのと、これ以上迷惑をかけられないので、申し訳ありませんがやめさせてください」

と告げて、電話を切ると、さと子に対して次第に怒りがこみ上げてきた。そして

「お前な、ありもしないことを並べ立てて文句ばかり言ってんじゃねぇぞ。賢の母親なら、どうやったら賢が生活しやすくなるか、どういうことをしたら賢が暮らしやすくなるか考えてから物を言え!!親が息子の首を絞めるようなことをするんじゃねぇぞ」

そう怒りをこめて思いっきり叱りつけてやった。

 このことは市内の幼稚園の間や市の教育委員会の間でたちまち広がって、

「さと子はモンスターペアレントとして恐れられていたと」

賢が小学校を卒業するときに、支援学級の先生から教えられたときは、穴があったら入りたいどころではなく、穴を掘ってでも入りたい。そんな気持ちがした私である。

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