第31話平和な毎日のはかなさ

さと子が2回目の物損事故を起こして、車の修理を終えて保険の手続きをすべて自分でやらせて、いかに事故を引き起こせば自分だけでなく他人にも迷惑をかけるか、身をもって教えてからしばらくは落ち着いた平穏な毎日が続いていた。このまま平和な毎日が続いてくれたらいいなぁ。そう思って盆連休を迎えて、熊毛の実家の畑の草が伸び放題になっているということで、私たちと私の両親で、草抜きの手伝いに行くことになり、さと子は賢の世話があるので草抜きには参加せず、母は昼の料理の用意などで台所に行って、私の父と熊毛の父と私の3人で草抜きをしていた。このとき息子は少し咳をしていたので、夏風邪をひいたかなと思っていたのであるが、私たちが草抜きをしている間に熱が出たみたいで、病院に連れて行こうということになった。あいにく近所の個人病院は盆連休で休院。総合病院に電話をかけると当直の小児科の先生がいないということで、どうしようかと考えていて、私の母が

「今すぐ家につれて帰って、借家の近くの総合病院で見てもらいなさい」

というと、

「草抜きの手伝いがまだあるでしょ。」

とさと子。母が

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょうが」

というと、

「うるさいこのくそばばぁ。ちょっと3人の子供を育てたからってえらそうに」

と口ごたえをしたそうである。それに当然母は怒り心頭

「もうあんたたちの世話は一切見んからね」

といわれる始末。私は賢を急いで車に乗せて、高速を使って早速総合病院に電話して診察してもらったんであるが、帰りの車中、さと子が

「あんたのお母さんてすぐに怒るねぇ。あんたがすぐ怒るのもお母さんの育て方が間違ってたからじゃない?」

などと寝ぼけたことを言うので

「誰だってうるせいこのくそばばぁ。と言われりゃ頭に来るのも当然じゃろうが。これからどうなっても俺は一切知らんからな。お前が全部責任を取れ」

そう言って、喝を入れておいた。私の母だって孫が熱を出せば心配するのは当たり前だと思うし、早く帰って安静に寝かせておくのが一番だと思うだろう。それを

「うるせいこのくそばばぁ」

といわれたものだから、激しい怒りを感じるのも当然だと思う。そして家に帰って布団を敷いて、病院で処方された薬を飲ませて寝かしつけていると、

「あんたのお姉さんはいいよね。子供が熱を出したとかなったら、お母さんに面倒を見てもらえばいいんじゃから。お姉さんばかり楽してから。実家のすぐ近くに家を建てて、そういうことも計算に入れて子育てしてるんじゃから、ずるいよね」

そう言うことを言ってくるので、

「お前な、ここに引っ越してくるときなんて言った?俺の身内や家族の悪口は一切言わない。そういう約束じゃったろうが。それを忘れたとは言わさんぞ」

そう言うと、

「そんなこと本気で信じてたの?」

というので、

「ふざけんな。これから先俺の家族や身内のことを少しでも悪く言ってみろ、そこらへんにおられんようにしてやるからよう覚えとけ」

そういて怒鳴り散らすと、

「やっぱりあんたがすぐ起こるのはあんたのお母さんの性格とそっくりじゃわ」

などというので、殴りつけてやりたい気持ちを必死で抑えながら、

「もう取り合わんのが一番」

と思い、賢と一緒に少し横になって眠った私である。

 それから夕暮れになって夕食の時間になっても、私がまだ機嫌が悪いと言うことを察するや、

「さっきはごめん、言いすぎた」

といかにもしおらしく謝ってくるが、なんか白々しい演技にしか見えなかった。この場を丸く治めるためにまぁ謝っておこうか。それくらいにしか私には見えなかった。本当平穏な日々って言うのは長く続かないもんなんだなぁと実感したしだいである。

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