第29話さと子の引き起こした事故

家の前の狭い通学路で、スピードを出しすぎてカーブを曲がりきれずに電信柱にぶつかる事故を起こしたさと子。制限速度を30キロも上回る速度で運転していたそうで、日ごろから私は

「ここは通学路じゃからいつ子供が飛び出してくるか解らんから、とにかくスピードを落とせ」

と口すっぱくしていって聞かせていたのであるが、とうとうやったかという感じがしてました。ぶつかった相手が電信柱で、車もドアミラーが全損したほかは、左のフロントフェンダーからリアフェンダーにかけて擦ったあとがついた程度で済んでよかったのであるが、ぶつかった相手が人だったら・・・。助手席に賢が乗っていてもう少しぶつかりようが酷かったら・・・。そうならなくて済んだのが不幸中の幸いであった。そして私が

「あれだけスピードを出すなって行っておいたろ。お前は運転がへたくそなくせにスピードだけは必要以上に出しやがる。お前、事故やって人をひき殺しておいてどの面下げて被害者の葬式に顔だすんか。よく考えてから車の運転しやがれ」

私が激怒してそういうと

「あんた、私に怪我がなくてよかったねとか、そういう言葉はないの?普通家族が事故ったら、そういう言葉を投げかけてくれてもいいんじゃないん?」

というので、

「俺は今まで散々スピードを控えめにしろって注意してきたろ。それをまったく聞かんで事故やっといて何寝ぼけたこというとんじゃ」

さと子は

「じゃあ、あんたは運転がうまいから絶対事故らんのじゃね」

というので、私は

「俺は自分の運転がうまいなんて思ったことは一度もねぇよ。だからいつ事故を起こすか解らんから、車の運転は慎重に、スピードも控え目して運転してんじゃろうが。事故やったら俺一人が謝ってすむような問題じゃなくなることだってあるんじゃからな。それをよう頭の中に入れておけ」

と言っておいた。そして、車の修理や保険会社への連絡などをしなければならないのであるが、

「私が事故やったと思われるのが嫌じゃから、あんた連絡して。車屋に車もって行っておいて」

というので、

「ふざけるな。自分のケツは自分で拭け」

と思いっきり雷を落としてやった。

 私は自動車会社に勤めている関係上、もし万が一事故をやってその後の対応(被害者への救済や事故対応など)をきちんとしないと最悪懲戒解雇処分を受ける。懲戒解雇を受けるから事故処理をきちんとするというわけではないのであるが、社会人の常識として、事故をやったらその責任を追わなければならないという自覚を持つことは、車を運転するものとして大切だと思う。そういったことを自動車学校で習わんかったんか?そう思った私であった。さと子は私が事故対応してくれるのをずっと待っていたが、私は一切知らん顔していたので、ドアミラーが取れたまま車を運転するわけにも行かないので、渋々カーディーラーに電話して修理の依頼をして車をもって行き、保険会社にも連絡をしたようである。そして営業担当の人にも、車を大切に乗るように言われたそうである。

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