第26話干潟へ
私の家族のことや大家さんのことで文句をブーたれることの多いさと子との生活。しばらく平穏な日々が続いては波風を立てるようなことをするのがさと子の性格だったのであるが、2000年のゴールデンウィークは何事もなく迎えることができた。ゴールデンウィークで私も仕事が休みなので、賢と一緒に潮干狩りに行こうと思い、賢に海で濡れてもいいような格好をさせて、いざ天然のアサリの採れる干潟へレッツゴー。車を走らせることおよそ15分。新聞で干潮の時刻を調べておいたので、私たちが干潟についた頃はまだ潮が引き始めたばかりだったので、誰も干潟に来ておらず、いざ腰をかがめて掘り始めると、アサリや模様があまりはっきりしないヒメアサリなどが獲れた。私たちがいつも行く干潟は、岩にカキが付着しているので足を怪我しないようにゴム長靴を履かせて連れて行ったのであるが、賢は当然アサリには興味はなく、小さな石ころをどけては小さなカニやヤドカリを捕まえてバケツの中に入れていた。そして時折通り過ぎる山陽本線の電車を見たりしていた。やがて時間がたつと共に潮が引いて、いつの間にか干潟に人がたくさん来ていた。みんな考えることは同じなんだなぁと思いながらさらにアサリをとる私。そしてカニやヤドカリを捕まえてはアサリの入っているバケツに入れる息子。やがて賢が
「シーシ」
と言ってきたので、
「あぁ、そういえばまだここについてからトイレに行ってなかったな」
と思い、賢が転ばないように手を引いてトイレへ。このトイレ県内有数の海水浴場でもあるので、もう少しまともなトイレを設置してほしいところなのであるが、あれから14年たった今もトイレは昔のまま薄暗く・臭く・暗いトイレである。こんなんじゃぁ小さな子供は怖がるぞと思いながらも私もついでに用を足して、再び干潟に戻ってくると、自分たちが持ってきたバケツをどこに置いたか解らなくなり、あちこち探し回ってようやく見つけて、
「もう疲れたから帰ろうか」
と言って、再び賢の手を握って車に乗せて帰宅。家についてからまず潮風を浴びて、砂もついているので親子で風呂に入ってさっぱりしたあと、アサリをきれいに洗ってなべに水を入れて塩を入れて砂出しをさせておくために蓋をしておいて、私は賢と近所の神社に三輪車の練習をしに出かけた。そして家に帰ると元嫁がなにやら煮ているので、ひょっとして…?と思ってなべの中身を見てみると、さっき砂だしをさせるためにアサリを入れておいたなべを使って、さと子がアサリのお吸い物を作っているではないか。私は
「お前このあさり、ひょっとして今日獲ってきたやつじゃなかろうな?」
と聞くと
「そうじゃけどなんかいけんの?」
と聞いてくるので、
「いいわけないじゃろうが。今日は砂を吐かせるために一晩置いておかんととてもじゃないけど食えたものじゃないぞ。お前そんなことも主婦やってて知らんのか」
といったので、
「だったら今晩の夕食あんたが作れば?」
と逆切れする始末。主婦としてアサリを料理するときの基本中の基本だと思うのであるが。結局私たちが採ってきたアサリは砂が多くてじゃりじゃりして食べられたものじゃなかったので、アサリには申し訳ないのであるが、廃棄処分するほかなかった。人の文句を言う前に自分の料理の知識・腕前を上げろ。いつまでも料理がへたくそなのを親が早くに死んだからというせいにするなと思った私である。
ちなみに、私と賢が神社に出かける前にきちんと元嫁には、アサリの砂出しをしてるからいらわないようにと伝えておいたのであるが。人の話なんかまったく聞いてないさと子であった。
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