第25話さと子と大家さんの不穏な空気
私の父と姪っ子の誕生日会が終わってしばらくたったある日、私が仕事を終えて帰宅すると、さと子がどことなく不機嫌そうな顔をしていた。
「またなんかあったのか」
と思いながらも、夕食を食べていると、さと子が大家さんのことについてチクリチクリと文句を言い始めた。その文句の内容というと、元嫁が車でどこかに出かけようとすると、大家さんの奥さんが賢のことについて
「オムツは取れた?」
「最近少しずつ言葉が出るようになってよかったね」
と話しかけてきたのだそうである。
元嫁は
「オムツはもう取れました」
といって車を出したそうであるが、さと子の話では
「私がどこかに出かけようとすると必ず、草抜きとかやっていて、監視されているみたい。賢のオムツが取れようがどうじゃろうがほっといてほしい」
「あの大家さんは常に私たちのことを監視しておかんと気に食わんのよ。早くこんなところ出ようよ」
と言い出す始末。引越ししてまだ7ヶ月ほどしか立っていない上に、せっかく少しずつできてきた子供たちのネットワークを失うようなことになるので、
「そんなことできるわけないじゃろ。ここは大家さんの所有物なんじゃから、大家さんが草抜きをしようが、庭先で畑仕事をしようが大家さんの勝手。文句を言うほうがおかしい」
と言って黙らせた。賢の誕生日で姉の家族が参加したことに文句をいい、私の父と姪っ子の誕生日で文句をいい、大家さんが家の周りの草抜きをしたり、畑仕事をしたりすることで文句をいい、本当に
「こいつは文句を言うために産まれてきたんか。親は常に周りのみんなの文句を言ってたんか?」
と思うぐらい文句をブーたれることが多かった。別に大家さんが話しかけてきたら、腹を立てることなく、普通に話をすれば済むものを、不機嫌な顔をあらわにして話をするから相手だって、機嫌を損ねるし、それが巡り巡って誰に行くかというと、賢に回ってくるのである。私が外に出ようとすると大家さんと会って言われたのが
「あなたの奥さん、まるで宇宙人みたい。話がまるでかみ合わないし、すぐ機嫌を損ねるし」
といわれて、私は返す言葉もなかった。そのことを用事が済んで家に帰宅してさと子に話をして、
「自分より目上の人に対する言葉遣いには気を遣え。もう少し、周りの人を敬え」
と釘をさしておいた。自分が見せる態度や、言葉遣い。それが姿かたちを変えて自分以外のほかの家族に降りかかってくることを忘れるなと。自分にとって気に入らないことを言われたとしても決して顔に出すなとも厳重に注意しておいた。こんなことを大人相手に話をしなければならないなんて、精神的レベルは幼稚園児並じゃなと思いながら注意をした私であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます