第16話賢の幼稚園問題
賢が2歳になって、ようやく少しずつではあるが、言葉を発するようになってきたころ、3歳になってからスムーズに幼稚園に入園させるためにはどうすればいいかという問題があった。賢はどうしても周りとのコミュニケーションがとりにくく、こだわりとかもあって、うまく幼稚園に溶け込めないのではないかという心配があったのであるが、3歳になってからいきなり幼稚園に通わせるのも、賢にとって負担が大きいのではないかという気もして、3歳以下の幼児であっても、受け入れてくれる幼稚園がないか探してみて、私たちが住んでいるところから車で10分くらいのところにある幼稚園に行って話を伺ってみると、障害児教育にも力を入れているということで、体験入園させてもらえることになった。賢もはじめはどうしていいのかわからずに戸惑っている感じではあったが、周りの園児のみんなが賢に興味を持ってくれて、いろいろと話しかけてくれていた。雰囲気も良かったので、入園させてみるかと思い、入園の手続きを取ってもらって、賢の幼稚園の道具や制服を買いそろえて、幼稚園に通い始めたほんのわずか二日後、さと子が幼稚園の先生とトラブルを起こしてしまった。賢が帰ってきて制服を脱がしたところ、太もものあたりに何かでひっかいたような跡がついていたのである。幼稚園に問い合わせてみたところ、賢が何かにひっかけてしまって、それでついたものだと先生は説明してくれて、連絡帳にもことの顛末は詳しく書かれていて、私は
「小さい子供だったら、何かで転んだとか、何かに引っかかったとかよくある話だよな」
と思って、特に気にもしてなかったのであるが、さと子は、幼稚園の安全管理がなってないとか、一体何を見ていたのかとか、挙句の果てにはあなたに幼稚園の先生は向いてない。さっさとやめた方が身のためでは?とか、まぁ、担任を受け持っていただいた先生に対して、本当侮辱ではないかというようなことまで言ってのけていた。私が
「お前、いくらなんでもそれは言いすぎじゃ。せっかく賢を受け入れてもらえたのに、親が自分の息子の未来をぶち壊すことして何になるんじゃ。謝れ」
そういって、担任の先生に対して、私は心からのお詫びを言ったのであるが、さと子は
「なんで謝らんといけんのか。あの先公がケガさせたんじゃろうが」
などというので、私は呆れて
「お前な、子供が小さい頃っていうのは、しょっちゅう転んですりむいたり、怪我したりするもんじゃろうが。賢が大けがしたとかいうのであれば問題じゃけど、あれくらいの傷でいちいち文句言ってるんじゃねぇぞ。おまえが担任の先生に対してやったことは、侮辱以外の何でもないぞ。おまえ、自分が言ったことに対して生じた結果に責任持てんのかよ」
そう言い聞かしたのであるが、さと子は一切私の言うことを聞き入れることもなく、後日、私が仕事に行ってる間に園長先生と担任を受け持っていただいた先生がやってきて、直接謝罪したそうなのであるが、さと子はこの時も散々罵倒して、
担任の先生は幼稚園の職を辞してしまったという。そしてさと子が行ったことは、市内の幼稚園の間で共有されて、警戒すべき保護者としてリストアップされたことを聞いたのは言うまでもなかった。そしてこの出来事が、のちに賢が幼稚園に入園させることに、大きな障壁として残ってしまうのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます