第11話怪我の後遺症
怪我の縫合手術が終わって、仕事復帰できるようになってようやくいつもの生活に戻った9月の終わり。右腕の動きに問題はなく、痛みも無くなったので、やれやれと思っていた私。でも、完全に傷跡が消えるところまではいかなくて、切創した後がくっきりと残っている状態であった。9月の終わりとはいえ、まだ半袖で過ごすことも多く、Tシャツを着る度にその傷跡が見えるため、あの忌々しい光景が嫌でも目に浮かんでくる。私自身、仕事中に災害を引き起こさないように、細心の注意をしていたにもかかわらず、このような重大な災害を引き起こしてしまって、やりきれない気持ちでいっぱいであった。あの日、さと子が私の睡眠を妨害してなければ…。そう思うと怒りを感じるし、死んで帰ってくればよかったという彼女の言葉にも激しい憎悪を感じる。それでも、賢のことを思うとやはりひとり親にするわけにはいかない。そう思い、さと子と一緒に暮らしていたようなものである。そのけがの傷跡を引きずりながら仕事に行って、終わったら賢の相手をするために一刻も早くアパートに帰ろう。そう思っていた矢先、さと子がある提案をしてくる。
さと子の提案
9月も終わりに近づき、さと子がある提案をしてきた。
「私がしょっちゅうお姉さんのこととか、あんたの親のことで文句を言うのも、実家に近いからなんじゃと思う。実家から少し離れたところに住めば、あんたの両親のこともお姉さんのことも見んで済むようになるから、文句も言わずに済むと思う。どこかに引っ越そうや」
というものであった。確かにアパートから車で通勤するのには夜勤明けは眠気に襲われることもあって、かなりしんどいというのもあって、私も
「そうじゃなぁ。手ごろな物件を探してみようか」
ということになって、わたしはさと子に
「おまえさぁ、本当に実家から離れて住むことになったら、絶対も文句言わねぇんじゃな?もしこれまでみたいに約束破ったら、その時は覚悟しとけよ」
そうくぎを刺して、物件探しを始めて、10月の初め、会社から8ロキロほどのとこで、家賃5万円ほどで、部屋が3つあって、子供の部屋も何とか確保できるくらいの借家が見つかって、10月末に引っ越すことが決まった。このことを両親にも話して引っ越しの荷物をまとめながら、着々と準備を進めていった次第である。
それから少したって、私にさと子が
「今日ね、車を運転しててとても眠くなったんよ。あんたが毎日どれだけしんどい思いをしながら仕事してるか、よくわかったわ」
などと言ってきた。私は正直
「こいつ何言ってんだ?俺はそんなにたやすい仕事なんかしてねぇぞ」
そう思ったが、適当に
「あ、そう、フーン」
と返事をしただけであったが、それよりか、車の運転中に眠くなって、居眠り運転をして事故を起こさなかったからよかったと思った次第である。
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