第2話:そんなことより味噌汁飲みたい

朝日奈静香10歳になりました。


改めまして自己紹介を。


私の名前、前世の名前は朝日奈静香。


16歳のある秋に病死をしたごく普通の女の子。


今世では名前がない一般人類です。


次に現在の状況を。


時代は、恐らく紀元前。


なんにもない、自然だけがある世界。


今のところ人々のコミュニケーションも少なく、コミュニティが形成されることもない。


個人の力で生きていくしかない、そんな世界。


つらい……とにかくつらい……。


今のところ親と思わしき人から供給されるよくわからない魚と草を食べる生活をしている。


せめて焼きたい……もうなれたけど。


体もあまり大きくならずに何て言うんだろう、性別がない?


排泄器官はあるのだけれどそれ以外が、ない。


どういう世界なのかはそんなところしか情報がない。


あ、いや、もうひとつあった。


この世界には、


「ぎゃーーー!」


「あー今日も鳴いてるなー。」


モンスターがいる。


つまりファンタジーな世界だ。


……改めてまとめるとひどくない?


異世界転生ってもっとこう、ロマン溢れる、ファンタジーな町並みを楽しんだり出来る穏やかなものじゃないの?


アニメで見た世界はもっと鮮やかで憧れるようなものだったのに。


なのに私の転生した世界は時代も文明もない、ある意味ロマンはあるけど、開拓史はお求めではない。


「あー!もとの世界に帰って味噌汁のみたーい!」


のみたーい


のみたーい



紀元前50年、その叫びは森中に響き渡ったという。

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