第4話 再会の地へ
米の神様達?をありがたく召し上がり、俺と雫は街の中心に向かうことにした。
ビジネススーツに袖を通すと、目の前にゲームで見る様なステータス画面が現れた。
自分の身体状況の情報が表示され、スーツの耐久力のゲージが見える。
ニコニコした顔でスーツを着る姿を見ていた雫が口を開いた。
「見た目は普通のビジネススーツだけど、それはこの世界でご主人をサポートしてくれる。神機と同じく、意志と感情に反応して変化し、特定の能力を発揮するの。それが、この『世次元』で生き延びるための鍵になる。」
人差し指を立てながら雫は少しドヤ顔で説明した。
「具体的に言うと?」
「例えば、そのスーツには自動防御機能が備わっている。攻撃を受けた時、防御を求めればスーツが反応して防御を強化する。また、攻撃を仕掛けるときは、スーツが攻撃力を上げるように調整してくれるの。」
雫の説明を聞きながら、俺はスーツの感触を確かめる。見た目は確かに普通のスーツだが、感覚は言ってみれば何も着ていない様な感覚。普通、服を着ていれば肌に触れる風は遮られるが、このビジネススーツは風を感じる。そして、服の重さを一切感じない。これが俺の意志と結びついているという事かもしれない。
次にシズクから神機になったビジネスバッグの説明を受ける。
「ご主人、さっきの写真を神機に入れてみて」
右手に持ってるビジネスバッグを雫が指差す。
神機に写真を入れた。
「神機は写真を取り込むと、解析して対象の位置情報を引き出してくれます。」
雫は人差し指を立て意気揚々と説明を続ける。
写真を入れてから、神機のヒビ割れた革の隙間から薄緑の光が揺らめいている
目の前に浮かぶステータス画面も表示が変わる
読み込み中といったところか
薄緑の光が消えると目の前に半透明のMAP画面が映った。
MAP上に光る赤い点が表示されている。
消えた人達の位置だろう。
「ご主人が見てる映像は神機つけた私のストラップを通して私にも共有されている。」
神機の側面に3頭身になった雫のストラップが付いている。
「ふふふ、あと隠された機能もあるんだよ!」
「隠された機能?」俺は少し興味をそそられた。
雫はにやりと笑って、神機の側面に触れた。すると、神機全体が漆黒色にほんのりと光り始めた。
「ご主人、神機の中には、特殊な道具が隠されてます。例えばどこでもド○みたいに、空間を瞬間移動できる『テレポートカード』とか」
「え?!それドラ○もん!?」
俺は驚いて思わず声を上げた。
「そんなものがバッグに入ってるのか?」
「うん。でも、それだけじゃないんだ。神機は戦闘にも役立つ道具を内蔵してるの。たとえば、ポケットからスモークを撒く『煙幕ボール』が取り出せるんだよ」
「なんかドラ○モンの4次元ポケットみたいだな。ここが世次元なだけに」
「あとね。ミサイルも入ってるの」
「…すごいな。」
流石に冗談だろと思いながら俺は神機をまじまじと見つめた。
一方、雫は腕を組みながら誇らしげにウンウンと頷いている。
「そして…」
雫が静かに手の甲を俺の目の前に差し出し、パチンと指を弾いたその瞬間。
突然神機が震え出し、神機の中から何かが飛び出してきた。
目の前に無数の黒猫が現れ、彼女の指示に従って辺りを索敵し始める。
「これも隠された機能の一つ、式神だよ。敵の動きを察知したら、すぐに知らせてくれるの。これで、私たちが安全に動けるようになるんだ」
「!!」
黒猫達は半透明で実体はなく、あらゆる物体を通り抜けけ移動している。
宝石の様に蒼く輝く目は周囲を索敵していた。
「え?!……可愛い。」
俺は萌……。感心しながら式神が周囲を警戒する様子を見守った。
「でも気をつけてねご主人。神機の力を使いすぎるとご主人の身体にも負担が掛かるから無茶は禁物だよ」
雫が再度パチンと指を弾くと式神達は神機の中に戻っていった。
「了解!でもまぁ、頼もしい神機で心強いよ」
雫は嬉しそうに笑顔で応え、説明を続けた。
「ご主人、式神を呼んだ後に両手で指を弾くと式神は神使になります。数の多い敵に出会った時は式神を神使にして戦うのがお勧め。」
「神使ね。」
「式神が神使になると圧倒時な攻撃力を得られるけど、神使でいられる継続時間は短いの。だから、使い所は考えて。」
「わかった。」
二人は改めて気を引き締め、MAPに表示された人たちの位置を確認し実家を後にした。
最初に向かうは商店街。
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しばらく歩いて雫と俺は商店街の入り口に着いた。
ここは商店街東門。
東門の入り口には地元でも有名なお寺がある。
商店街の入り口とお寺の入り口は一緒だ。俺の世界では元々大きな鳥居があったが、世次元ではその鳥居が倍以上に見える。
赤く太い鳥居に巨大な金色の龍が巻きついており、見た目も黄泉の世界にある様な見た目に変わっていた。
門を抜けようとした時。突然神機が震えだした。
雫が慌てて駆け寄り、お互いを背にして前後を警戒する。
「ご主人、何かが接近してる!気をつけて!」
雫はすぐに指を鳴らし式神を呼び出した。
神機から無数の式神が飛び出し周囲を索敵する。
その時、俺の目の前にあるステータス画面が更新された。
「異常・反応あり」と赤く点滅している。
「雫、これは…」
雫は神機をじっと見つめ、鋭い目つきで言った。
「ご主人、向かって来てるのは一人や二人じゃない…。」
「神使を出すか!?」
その瞬間、大男の叫び声の様な不気味な音が響き渡り、複数の黒いシルエットが姿を現し、ボロボロの黒いマントに能面をつけた背の高い男達が俺達を囲んだ。
能面とマントを着ているが、隙間からは血の気を感じさせない白い肌が見える。
「汝どこから迷いこんだ。ここは汝が居るべき場所ではない。」
俺と対峙した1人が、ボロボロのマントから長い腕を出し、指を差しながら怒鳴った。
それに反応する様に他の大男達が怒号を上げる。
俺は反射的に神機を握りしめる。湿った手は自分が動揺している事を意識させた。
対して雫は落ち着いて指示を出す。
「ご主人、初戦で奴らは分が悪い。一旦『テレポートカード』を使って、すぐに脱出しよう!」
俺はすかさず神機を開け、指示された通りに「テレポートカード」を取り出す。取り出した瞬間、カードが光り輝き、瞬く間に俺たちを包み込んだ。
次の瞬間、俺たちは別の場所に瞬間移動していた。
「…これが『テレポートカード』」
俺は驚きながら周囲を見渡した。そこは、商店街の一角にある電気屋の屋上だった。商店街の西側に位置する場所。俺達は東側門から一気に西側に飛ばされた様だ。
雫がほっと息をつきながら、俺と目が合うと微笑んだ。
「ふう、無事に逃げられてよかった。でも、これからは慎重に動かなきゃね。やつらも本気で私たちを追ってくるはずだから」
俺は大きく頷き、神機を再度しっかりと握りしめた。
「さっきの奴らは何者なんだ」
「奴らは月夜見。世次元を「清浄な世界」と捉えてて、外から来た者がこの世界を汚すことを嫌う。奴らにとって、ご主人は異質な存在。その異質さを排除するために執拗に追いかけてくるよ。」
「今はまともにやり合わない方が良さそうだな。」
再びMAPを確認し、目的地へと向かうことにした。
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