第3話 テンプレはてんぷら粉の如し

「テンプレ~? そんなありふれたもの使うからラノベは馬鹿にされると思わないんですか」

「それは読まれるもの書いてから言えよ! お前の二話目へのブラバ率どれくらいだ?」


「ブラバ?」

「ブラウザバック。離脱。一話目と二話目のPV比べてみて」


「一話目50で二話目10PV」

「・・・ダメダメじゃない。三話目2PV? 四話目以降0が続く・・・よく30話も心折れなかったわね。えらいえらい」


「褒められてる気がしない」

「貶しているからね。これで分ることは?」


「一話目しか読まれていない」

「違うわ」


「え?」

「一話目すら読まれていないのよ。多分三~四行で読むのやめられているわね。一話目も開いただけで読まれていない。それがブラバよ!」


「え? じゃあ50人は読んでいると思っていたのは?」

「勘違いね。確実に最後まで読んだのは10人。それもダブって開いている可能性があるからほんの数人じゃない?」


「どうすればいいんですか! 読まれてもいないって!」

「だから多くの物書きはテンプレ使っているのよ!」


「どういうことですか⁉」

「あのね。あなたは天ぷら揚げようと思ったらてんぷら粉買うでしょ」


「そんなもの無くても小麦粉と卵で揚げられるじゃないですか!」

「それおいしい?」


「そこそこ」

「カラッと騰がる? サクサクしてる?」


「でも手作りってそう言うもんじゃ」

「じゃあ作るわよ。小麦粉とてんぷら粉、どっちが美味しいか食べ比べて見な」



「同じ材料で同じ手順。揚げたのも僕なのに、てんぷら粉使った方が美味しい。見た目もいい。なんで?」

「企業努力よ。てんぷら粉の原材料の所読み上げて」


「小麦粉・コーンスターチ・卵黄粉・ベーキングパウダー・乳化剤・カロチン色素・着色料(ビタミンB2)」

「いろいろ入っているでしょう。コーンスターチはさくさくさせるため。ベーキングパウダーは膨らし粉ね。べっとりとするのを防いで軽く仕上げられるの」


「凄い」

「テンプレ使うって、てんぷら粉を使うようなものなの。あるいはカレーのルーね」


「ルーなんて本格じゃないじゃないですか! 自分でスパイスを調合して」

「それおいしいの?」


「・・・」

「いまいちよね」


「・・・はい」

「あのね、肉と野菜煮込んでスパイスいれても現代日本のカレーにはならないの! カレールーの成分表見て見なさい!」


「食用油脂(牛脂豚脂混合油(国内製造)、パーム油)、小麦粉、砂糖、食塩、でんぷん、カレーパウダー、全粉乳、脱脂大豆、クリーミングパウダー、はちみつ、酵母エキス、玉ねぎエキス、ローストオニオンパウダー、トマトパウダー、オニオンパウダー、バナナペースト、ポークエキス、粉乳小麦粉ルウ、脱脂粉乳、りんごペースト、香辛料、ガーリックパウダー、しょう油加工品、トマトエキス、チーズパウダー、ローストガーリックパウダー、ホエイパウダー、粉末油脂/着色料(カラメル、パプリカ色素)、調味料(アミノ酸等)、乳化剤、香料、酸味料、香辛料抽出物、(一部に乳成分・小麦・大豆・鶏肉・バナナ・豚肉・りんごを含む)ってどんだけ!」(バーモンドカレー中辛より)


「ルーひとかけの中に、これだけ詰まっているのがカレールーの正体よ。それが各ブランドによっても違うの。各企業研究に研究を重ねた知の結晶よ。だから小学生でもそれなりのものが作ることができるの。テンプレを使って書くって言うのもそういうことよ! 先人が何人もの手をかけ磨きぬいてきた知の結晶。それがてんぷら粉でありテンプレ展開。市販のてんぷら粉を使ったものを手作りって言いたくない? 立派な料理よ! カレールーツ使ったカレーを母親の味って言ったら悪い? 立派な料理よ!」


「う~!」

「小学生でも作れる美味しい家庭料理も作ることができないのに、本格にこだわってどうする! おいしければ正義。面白ければそれでいいの! いやむしろ積極的に使いなさい! 皆の幸せのために!」


「みんなの・・・幸せ?」

「だって、誰かのために料理をするって笑顔が見たいからじゃない? 空腹の辛さを解消させるためじゃない? 一緒に食べて楽しさを共有するためじゃない? その手段はどうでもいいの。おいしかったらさ!」


「そ・・うだね」

「だったらてんぷら粉だろうがお好み焼き粉だろうが冷凍餃子だろうが使えるものは使うんだよ。オリジナルの時間と愛情をかけた料理? 不味かったら意味ねえんだよ! お前の考えなど不味けりゃ意味がねえんだよ! 小説だって同じだ! 楽しいものしか読まないんだよ! 読みやすいものしか読まないんだよ! そう言うお客さんの集まっているところがネット小説界だよ!」


「それでいいのか?」

「それでいいのよ。そんなもんなのなの。気取った本格派を目指すなら公募にでも出せ! 読まれないと嘆くな! まあ、お前レベルでは一次落ちだろうがな」


「ひどい!」

「それが現実だ。まずは食えるものを作れ。それからだ」


「テンプレ使ったら個性がでないじゃないか!」

「そんなことはないぞ。そうだな、じゃあ次は天ぷらの個性ってやつを教えてやるか。心えぐるぞ」


「優しく教えてくれないんですか」

「なぜだ? 聞きたくないなら去れ。面倒が減る」


「・・・お願いします」

「よろしい。楽しくなりそうだな」


「・・・・・・ソウデスネ」

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