第2話 まずは食べられるものにしようか・・・
「え~とさ」
「はい」
「あなた、『日本語書けたら小説は書ける』って言葉知っている?」
「もちろんです! その言葉に背中を押されて書き始めました」
「ふ~ん。やっぱり。他には?」
「他にですか? 『ラノベは中学生が読める程度の日本語で書け!』とかですか?」
「やっぱり」
「それがなにか?」
「日本語になっていない! 中学生からやり直せ!」
「えええ! 日本語ですよ! むしろ英語はわかりません!」
「あ~。日本語話せることと文章かけることとは違うんだ」
「え?」
「今会話できてるでしょう。だから小説書ける担保にはならないんだよ。中学生がわかる文章って、中学生がわかるように洗練された文章ってことでね、中学生の会話書いても小説にはならないんだよ」
「わかりません!」
「だろうね」
「わかるように教えて下さい」
「じゃあ、料理で解説するね」
「だから何で料理なんですか!」
「わかりやすくするためだ。会話はな卵かけごはんだ」
「は?」
「ご飯と卵と醤油があれば、誰でもおいしく朝食が取れるし栄養的にもかなり良い。それが卵かけごはん」
「だから? 何?」
「いいか、会話を定義する時卵かけごはんと思え。会話でも上手な人と下手な人がいるだろう」
「いますね」
「美味い卵かけごはんは、ブランド米を上手に炊き上げ、品質の良い納豆と醤油を使ったものとか、ちょい足しで品質を上げたものだ。下手なのは品質の悪いものの寄せ集めとか、卵が古いとか、そういうものだ」
「なるほど」
「小説にするには調理が必要なんだ。同じ材料でもオムライスにするとかだな。そうなると、作業と材料が格段に増えるわけだ。最低限でも、家庭料理のオムライスでもおいしくなければいけない。お前に妹がいるとして、初めて作ったオムライスが、卵が焦げて破れていても、味のバランスがおかしくても、始めてだったら頑張って完食してほめるだろう。それでいい気分になった妹が、『これでいいんだ』と思って毎日出来損ないのオムライスをあなたに出し続けたらどうする? 頑張らないと食べられないオムライスだよ! 食べる?」
「食べないか、直すように言う」
「直すように言わず、食べられなくなったのがあなたの作品! 書籍化うんぬん以前に、知り合いからも拒絶されるくらいの家庭料理としても出来損ないの日本語しか書けていないの! だから一話目から三話目までは義理で読んでも。それ以上は食べる気が、いえ、読む気がしなくなっているんじゃない」
「うっ!」
「中学生に分かる程度って、かなり上級のオムライスなの! ありふれた材料を使って、簡単そうに見えて、本気で難しいことなのよ。最低限、家庭料理で美味しいものにする。それが文章化にする日本語なのよ!」
「オムライス。自分で作ろうと思うとかなり面倒くさい」
「わかっているじゃない。おいしいよねオムライス。でも作ったことのない人からしたら『たかがオムライス』なのよ。『ラノベなんて日本語話せたらかけるじゃない』とか言うのよ。ふざけんなって言いたい!」
「そうですね」
「あんたの書いたこの作品、調理工程が無茶苦茶。日本語になっていないのよ! 材料は確かに日本語。でも仕上がりは不味いオムライスのような偽物!」
「うぎゃぁ~!」
「だから、最初は義理で読まれてもPVどんどん減っていったの。わかる?」
「・・・はい」
「じゃあ分かったってことで。終わっていいかな」
「どうしたらいいんですか! 教えて下さい!」
「え~、めんどい」
「読まれたいんです!」
「じゃあテンプレ・・・」
「テンプレ? 嫌です。僕は僕のオリジナルで勝負」
「舐めるな!」
「え?」
「テンプレも理解せず何を言っているんだ!」
「だってあんなもの」
「あ~、怒っていい! じゃあ、次はテンプレについて語ろうか。ふはははは」
「テンプレ? 僕には関係ないですね」
「そう言っていられるのは今のうちだ。いいか、テンプレはな、てんぷら粉だ!」
「ダジャレですか!」
「聞いてから同じことが言えるかな」
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