第三話.蛇神の加護②

─── お父さま。彼女は誰ですか?


お嬢様はそう言うと僕の顔を見つめる。彼女は僕の顔を見て……



「か、可愛い……」



と言っている……本当に何なんだ。彼女のお父さんも彼女もロリが趣味なのかと疑ってしまう。そして僕の翼や尻尾を触って来る。正直言って結構鬱陶しい。尻尾を触られるとこしょばゆいし体が危険信号を誤信して防衛体制に入りそうになるから誰か止めてくれ……これ以上されたら攻撃するかもしれない。


誰か助けてと思っていると一人の兵士がお嬢様に手を止めるように言った。



「お嬢様、彼女が嫌がっているように見えます。大変失礼かもしれませんが尻尾を触られるのはお辞めになっては」



名も知らない兵士くんありがとう。君のおかげで僕は助かったよ。そう思っていたが彼女の手は止まらない。というかさっきより酷くなった気がする。



「もふもふ気持ちいい〜」



彼女は幸せそうな顔で触っている。

僕は今イライラしている。


幸い、兵士くんの助言のおかげで他の兵士たちも同調して止めようとしている。しかしこのお嬢様は言うことを聞いてくれない。


僕はその後は何も考えないでおっさんが来るまで放心状態でいる事にした。そうしないと多分お嬢様を殴ってしまう気がする……




はぁ……僕は大きなため息をついた。さっきまでの記憶は無いが今はおっさんが用意していた馬車の中にいる。それにしても彼女はずっとずっと僕の顔を見ている。勘弁してくれ。




あれから街の近くに着くまで彼女は僕にたくさんの質問を投げた。僕は彼女の質問攻めにかなりの体力を使ってしまい死ぬほど疲れた。


彼女は質問をたくさんした後に寝てしまった。寝顔めっちゃ可愛いなとまじまじと見ていると彼女が突然目を開いて僕の顔を見た。



「寂しくて何かお話をしたいのかな?」



にやつきながら僕に対してそう言った。僕は寝たふりをしてその場をやり過ごそうとしたが僕の体を横に揺らしながら起きろ起きろと言っている。



「横に揺らして来るの辞めて……」


「えー、可愛いから嫌だ」



あ、悪魔だとその時思ってしまった。たまには一人の時間を過ごさせてくれ。彼女の顔をチラッと見るとにやつきながら僕の顔をずっと見ている。どんだけ僕のこと気に入ってるんだよ!と言いたくなるほどだ。



「レイナちゃん本当に可愛い……」



ん?僕はなぜレイナと呼ばれているんだと一瞬思った。だがすぐになぜそう呼ばれているのか思い出した。


あれは馬車に乗った時だった。場所に乗ってすぐに名前を聞かれてしまい咄嗟に自分の名前はレイナだと言ったのだ。


ちなみに怜って言っても良かったがそれは前世の名前だから少し自分の中で抵抗感があったのだ。


今になって偽名でしたと言えるわけないし自分の名前はもうレイナで良いやと一生使う名前をてきとうに決めてしまったのだった。



「そんなに僕のこと褒めても何も出来ないよ」



そう言うとお嬢様が興奮した顔でにやにやしている。本当に怖くなってきた。本当に何なのだろう。


興奮するお嬢様を無視して外を見てみると明かりのある大都市が見えて来た。星のように輝いている活気ある街だ。


もうすぐで街に着く。地震で死んだ後に精神的に弱っていた僕がここまで成長出来たのは間違いなくあの山脈の過酷さのおかげだろう。


蛇神の加護のおかげで人の姿になれてこうやって楽しい日々を過ごしている今に感謝してこれから始まる新たな生活を楽しもう。



───神様ありがとう。


第三話.蛇神の加護②END

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