第三話.蛇神の加護①
ナーガが帰ってから三時間後の今、僕は明日に備えて早めに寝ていた。このメデ山脈は雪が年中降り続けるせいで焚き火すら作っても雪と風ですぐに機能しなくなる。
風は強く吹き、雪はずっとずっと降り続けるこの過酷な土地で僕は生き残るために生活困難なこの土地を早く抜け出したいと心から願っていた。
深く睡眠できないこの現状。
いつ魔物が来るかわからない警戒心
かなり体力的にも精神的にも来る。
しかし、一度決めた事はやり通さないといけない。というよりやり通さないと生き残れるかわからない。それほどメデ山脈は生き物が暮らせる環境では無いのだ。
それから朝日が出てきて僕は眠い目を無理やり開けようとするが目が開かない。
僕は2日後ほど経てば第一目標のイーテル村に着くので今立ち止まったら駄目だとわかっているのに何故か目が開かない……もう体は限界なのか?
───ジリジリジリ……
耳鳴りのようなものがする。正確には耳鳴りに似ているが少し違う。脳に響き声のような物が聞こえて来る感じ。まさかスキルか何かを取得するのか?
ユニークスキル:『ナーガの加護』の付与が完了致しました。ユニークスキルの効果によりスキル:『光魔法』の取得が完了され、スキル『光魔法』の獲得により『ライトウルフ』へ強制進化を致します。
どう言う事だ……強制進化に神の加護の影響で光魔法を取得する。やはりこの世界は謎が多い。考えれば考えるだけ頭がぼんやりとしてきて眠くなっていく。いつの間にか僕は深い眠りについていた。
寒い……目を覚ますと何故か僕は全裸になっていた。しかもこれって……どうやら僕はオスの狼ではなくメスの狼だったようだ。しかも人間に近い体をしている。現状をまとめるため今起きた事を整理すると特定のスキルを得て強制的に上の魔物へ進化する事が可能である。謎の声はライトウルフに進化って言っていた。そしてライトウルフに進化すると人間のような姿になる。
しかし、よく見ると不思議だなと我ながら思う。白い翼が生えていて尻尾と狼の耳が生えている以外は普通の女の子だ。白銀の髪は綺麗で顔はどんな感じかわからないが多分ロリコン男性は一発でナンパするレベルだろう。
まあそんな事はどうでもいい。人間の体に近づいたせいなのか前と比べて寒さに弱くなった気がする。これって退化じゃないのかな……でも獣人って全員可愛いしいいね!
僕はそんな事を考えているうちに近くから足音が聞こえてきた。足音はどんどん近づいて来る。踏みつける音的に靴を履いているのだろうか。今の状態で人間に見られたら何されるかわからないな。
変な事を考えていると足音は突然止まった。
「こんな危険な場所で大丈夫ですかな?」
顔を見ると髭を生やして眼鏡をかけて貴族のような高価な服を着ている男がそこにいた。
「僕、実はここの近くにある村に行きたいのですが……」
僕はそう言うと彼は腕を組んで何か考え事をした。そして彼はこう言った。
「君はライトウルフかな?自分は初めてライトウルフを見るけど本当に実在していたとは……」
「え?なぜ実在していないと思ったんですか?」
彼は少しにやついた表情をしてこう言った。
「ライトウルフは神の使いと言われていて狼族の魔物で神の加護を持たないと進化できない希少種と聞いていたがまさかこんな可愛いとは……」
僕はこいつもしかしてロリコンかと思いつつ服はありませんかと尋ねた。流石に全裸は恥ずかしいしこのおっさんが本当に安全な人かは確信を持てない。ここで服を持って来てくれたら安全な人と判断するのもありだろうと考えた。
すると彼はバックから自分の予備の服を取り出して僕に渡してきた。僕はその服を着ると翼のせいですぐに服の背中部分が破れた。やはり男物の服だから僕が着てもぶかぶかだったがとりあえずは人里に入れるレベルの身なりになったと思う。まあ翼のせいで服が一部破けてしまったが。
僕は彼の話を聞くとここの近くで大きな魔物が発生したらしく彼はちょうどその魔物を討伐し終わったら突然人の気配がある事に気づいたらしい。そしてここに来て僕に大丈夫かと話しかけたらしい。一時は遭難したのかと思ったが翼と狼の耳を見て英雄伝という本に伝わるライトウルフではと思ったそうだ。
彼は僕をすごく心配していて僕に対して気を遣っているように見えた。そして彼は僕に対してこう言った。
「良かったら、一緒に近くの街まで行きませんか?」
僕は彼のその言葉を待っていた。なぜなら僕一人だけだと快眠できないからだ。彼がいれば交代して快眠できるはず……!
「はい、よろこんで!」
僕がそう言うとおっさんは近くの場所に案内すると言った。僕たちが3分ほど歩くとそこには……お嬢様と10人ほどの兵士がいた。第一印象は人形みたい。金髪で背が僕より高くてとても美しく可愛い。そんな彼女は口を開けてこう言った。
───お父さま。彼女は誰ですか?
第三話.蛇神の加護①END
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