第一話.再会②
「お前は何者だ?」
ゴブリンは壊れかけた斧を構えている。彼らの手は小刻みに震えていてまるで化け物を見ているかのような目をしていた。
「質問を早く答えろ!」
彼らはひどく怯えていて戦闘をする意思すら見えなかった。まるで僕が彼らを虐めているように見えて僕は気に食わない。
「僕は普通の狼だけど何か変なところでもある?」
彼らはその言葉を聞いて震えていた手は止まり、その顔は恐怖という物より怒りに近い感情を持った顔になっていた。
「お前はなぜ魔族語を話せる?そして何故お前から魔物ではなく亜人族の匂いがする?どういう事だ!」
話が理解できない。亜人族とは何なのだ。そして僕や凛は魔物なのか。一瞬混乱していたが彼らにこの世界の情報を教えてもらうチャンスだと気づくと僕は彼らに質問をした。
「亜人族というのは何なのだ?」
その質問を聞いて彼らはポカンとした顔で僕を見た。
「亜人族は魔人族と人間族とのハーフだ。そして俺たちゴブリンは鬼族と人族のハーフなんだ。本当に何も知らないのか?」
彼らは輪になってコソコソと話し合いながら僕たちの顔を見た。そして彼らは武器を構えるのを辞めて僕たちに近づいてこう言った。
「疑ってすまない。魔物の見た目だが魔族語を話す者を初めて見たんだ。許してくれ」
とりあえず変な疑いが晴れた。緊張と警戒をしていたせいで変に疲れが溜まった。もう疑うのは辞めてくれ。
周囲を見渡すと凛の姿が何処にも見えない。どこに行ったのだろうか。
「あの、もう一匹の狼はどこに行ったかわかりますか?」
ゴブリン達はきょとんとした表情で僕を見つめる。そして彼らはこう言った。
「最初からここには貴方しかいませんでしたよ」
その言葉を聞いた瞬間僕は気づいてしまった。僕は凛に依存していた。いつも凛と一緒に行動していた僕は山の穴で一人暮らしをする生活に耐えきれずに現実から目を背けていた事に。
───最初から凛なんか居なかったんだ。
僕は思わず笑いが込み上げてきた。僕が笑う姿を見たゴブリンは気味悪がって僕から少しずつ離れていく。
急にどうしたんですか?とゴブリン達は聞いてくるが今の僕にはアリくらいの小さな声に聞こえる。僕は思わず笑いと涙が出てくる。
寂しい、悲しい、凛と一緒にいたい。僕を置いていかないでと僕の心が壊れかけていた。
───その頃、アポロ帝国では……
「元気な子供が生まれましたね。旦那様」
「そうだな、この子は将来は美人に育つぞ」
メイドは赤子を持ち上げて男に抱っこをさせる。その赤子は宝石のように輝いた目をし、黒い透き通った髪をしていた。
赤子の名は、リンズ=スターランド
第一話.再会②END
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