メデ山脈編
プロローグ.全ての始まり
「怜くんおはよう!」
幼馴染の凛は毎日僕に挨拶をする。
彼女は文武両道でとても優しい良い子だ。
僕はそんな彼女を陰で応援をしている。
今年の夏は体が溶けそうなくらい暑い。冷房を付けても生温かいような微妙な温度だ。
特に僕たちが通うフェンリー学園高等部は古い校舎を使っていて一部の部屋はエアコンすら設置されてない現状だ。
「怜くんさ、おはようの挨拶してよね」
彼女は頬を膨らませて僕をじっと見つめる。
その目はエメラルドのように綺麗で見ていて心癒される何かがあった。
「ごめんな凛、おはよう」
彼女はその言葉を聞くと満足そうな顔で自分の席へ行った。
───こんな日々が続いて欲しいな。
僕は今の生活にとても満足していた。仲の良い友達に幼馴染もいて何の不安もないこの生活を。
僕は退屈な古文の授業を終え、暑い中の体育を乗り越えて気がつけば帰りのホームルームの時間が来ていた。
「明日は校外学習だから事前準備を怠るなよ」
いつもの先生の長い話の時間が始まった。伝えたい事が多いのか余計な情報まで伝える担任の癖を治して欲しいものだ。
「あのー、飯島先生。話が長いです」
副担任の井田先生が今日居たおかげで早く終わるよう飯島先生に言ってくれる。僕は井田先生の行動に踊りたくなるくらい嬉しい気持ちだ。早く帰らせてくれ。
僕がすぐに帰れるように荷物をリュックにしまった瞬間にあれは起きた。
───ガタガタガタガタ
「みんな!机の下に入れ」
先生はそう叫ぶとすぐに机の下に潜るように入った。みんなが持つスマホは不気味な声をあげている。『地震です。地震です』
大きな地震が突然来た。
泣いているクラスメイトや震える手で頭を守る皆んなを見て僕は冷静になるよう息を吸う。
ここで冷静にならなくては死ぬという脳が信号を送りつけてきたからだ。揺れは段々と大きくなっていき古い校舎はメキメキと不気味な音を立てて大きな横揺れが僕らを襲う。
「まずい、みんな逃げ……」
「先生?待って。先生が……」
先生は皆んなに逃げろと忠告したが時すでに遅し。先生は上から落ちてきた瓦礫の下敷きになり血飛沫が遠くまで吹き飛んでくる。
「助けてよ、お母さん。お父さん」
「もうおしまいだ」
「いやだ、死にたくない」
皆んなが完全に冷静さを失った。もうこれはだめだ。
悲鳴は大きくなるも次第に落ち着いたのか皆んなが段々と静まっていく。僕は鳥のようにうるさい皆んなの声が静かになり安心した。待て……そうか僕たちがいくら叫ぼうと逃げようと体が挟まっては、足が瓦礫で潰れてはもう完全に詰んでいて叫んでも意味がなく後はただ死ぬだけのようだ……
───俺は凛に気持ちを伝えたかった……
この日、日本は崩壊した。この大地震の被害は日本が機能しない程にまで多くのものを破壊した。多くの土地は瓦礫の山になり、多くの人は死に絶えてこの国はもう限界の時が来たようだ。
絶望の中で死んだ少年の大きな旅路の物語はこの日に始まった。これが最後で最悪の記憶なのだと魂は刻みながら果ての世界へと向かう。そして彼の魂はある場所へと着き僕の中で何かが目覚める。
───おはよう。怜
プロローグ.全ての始まりEND
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