第2話
平冨 保はそこにいた。
南公園の草むらの奥。皆が秘密基地といい、
放課後屯するその近くの土に、
買っていたハムスターを埋めた。
彼は手頃なシャベルで片時もなく掘り続けた。
続くはまた深く、その深くまで掘り続けた。
またしても私は飼っていた蔵鼠を
握りつぶしてしまった。
その感覚はなんとも言い難く。
それはそれは快感であった。
「また生まれてこいよ」
私はそう、これが普通になってしまったのだ。
ああ、なんとも言い難い、
私は晴れやかな気分になっている。
これをこう、彼らに見せるんだ。
平冨がそう頭で考えた途端、彼らが現れた。
向こうのほうから彼らが現れた。
彼らは三人で歩いている。
そのうちの1人が気づいた。
驚いて大きな声を出したのだ。
「わあ、平冨くん、びっくりした」
「どうしてここに?」
平冨はにやけ顔を浮かび上げる。
彼は右手に握っているものを彼らに見せた。
それは掌で握りつぶした蔵鼠である。
臓器はめくれ、
凄惨なその姿を見た彼らは口を塞ぐ。
平冨はその口を開き、
「埋めておいたんだけど見せてあげるよ、
僕の大切な鼠を」
少量の土が地面に散る。
開いた口が塞がらないまま、彼らの1人が
「どうしてそんなことができるんだよ」
という。
かえって彼は、
「大切にしすぎて、こうなった」という。
危険を察知したのか、
彼らは行こうぜと言って去っていった。
何がいけない?何がいけないんだ?
大切な人を大切にして何がいけないんだ。
彼の右の手のひらから
一縷の血溜まりが落ちた。
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