第3話
私はそう、この後、
施設に預けられることになった。
下世話な話や、塀の中の暮らし。
私は窮屈な日々を送ってきた。
頭の中で妄想したりする。
そう、あの握りしめた感覚、
胸が少し締め付けられるような感覚。最高だ。
私はその隙間から漏れる陽を
じっと眺めていた。
私は中学生になっていた。
気がつけばその衝動というものが
少し弱まってきたのだ。
騒々しい階段を上がる。
彼らが共にする生徒たち、道は
平坦になり
私は教室へとたどり着いた。
新しい街に来て、通学路も覚えたてのまま。
全てがあやふやだった景色に光が差した。
女神だ。
同じクラスの吉崎美玲、彼女は女神だ。
つるんとした唇、その凛々しい目、
私のものにしたい!
これは一目惚れというものか。
人生初のその突発的な感情は、
地球にひびが入ってしまうようなものだった。
背景がモザイクに切り替わり、
彼女だけに焦点があった。
周りの音も消え去り、
彼女だけの世界へ誘われた。
それからの日々は上品なものだった。
枠組みから外れるような
この気持ちは一体なんだ!
寝ても覚めても飯を食う時も
何をしている時も彼女がいる。
好きです。
私は素直にその気持ちを告げた。
全てが解き放たれたような気分になった。
ごめんなさい。
この世に在る音が全て消え去った。
頭を銃弾で撃ち抜かれたような。
その日は部屋の隅で泣いた、泣き喚いたのだ。
だがまだまだまだまだ。
好きです。
どうだどうだ。
そんなに思ってくれるなら。いいよ。
来ました。神は実在しました。
こうして彼女が私のものになりました。
大切にする。大切にするぞ。
そうして私は彼女の温かい手を握った。
こんな温かいもの、
世界はまだ終わっちゃいない。
色んなところに出かけた。
駅前のショッピングモール、映画館、
その全てに彼女がいた。
愛おしい。愛おしい。
ある夜の駅の外れ、
私は彼女とベンチに座っている際、
すでに私は彼女の首を絞めていた。
その力は強く、強く。彼女の顔が窺える。
愛おしい、愛おしいからこその。
より強く絞めている。
「何やってるんだ」
と中年男性が駆け寄ってきた。
彼は近くの店の店主のようで、
店の名前がついたエプロンを着ている。
彼ら私を押さえつけた。
なぜ、なぜなんだ。
彼女の咳き込む声が聞こえる。
好きなのに、どうしてなんだ。
私が地面に押さえつけられている間、
彼女は鞄を掴んでその場を
立ち去ろうとしている。
さよならと彼女の声が
聞こえたような気がした。
私はそれからその足で交番へと
連れてかれたのだ。
事情を聞かせ、
しばらく拘留されることになった。
数日後、私は学校へ向かった。
人の目がやけに刺さる。
彼女の存在は学校から無かったことになった。
親の事情で転校することになったらしい。
どうして、どうして彼女は。
私が悪かったのか?分からない分からない。
分からない。
もしかしたら、もしかするとまだ
家の周りにいるかもしれない。
家に帰って、
そうだ、包丁を持って探してみよう。
あなたを失いたくないので殺します! 雛形 絢尊 @kensonhina
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます